チャットGPTがGDP予測精度を大幅改善　ECBが実証、わずか2ページで効果

2025年6月26日、欧州中央銀行（ECB）は、生成AI「チャットGPT」を活用して購買担当者景気指数（PMI）の定性コメントを分析することで、GDP予測の精度を大幅に高められるとする論文を公表した。

PMIの短文からGDP予測を高精度化、チャットGPTが鍵

ECBが発表した最新の研究論文では、生成AI「チャットGPT」による自然言語処理技術が、経済予測において実用レベルに到達していることが示された。
対象となったのは、月次で発表されるPMIに含まれる定性的なコメント部分であり、各企業の購買担当者が景気について語った短いテキストである。

今回の研究ではこうした定性情報をAIが分析し、景況感をスコア化した。
具体的には、ECBのエコノミストは、チャットGPTを使って各コメント文から経済状況に関する「ストーリー性」や「逸話性」を抽出し、構造化されたスコアに変換した。
それをナウキャスト（※1）モデルに組み込むことで、予測の精度が明確に向上したという。

このアプローチにより、わずか2ページの短文テキストでも予測の精度を大幅に高められることがわかった。

※1 ナウキャスト：現在進行中の経済活動を統計が出る前にリアルタイムで推定する手法。

リアルタイム経済分析に革新、ただし過信への懸念も

チャットGPTを使ったナウキャストの精度向上は、金融政策や市場予測において即時性と正確性を両立させる新たな武器となる可能性がある。
PMI（※2）のような速報性の高い文書をAIが即時解析できれば、中央銀行や民間の経済分析部門は、従来より早い段階で政策判断や投資戦略を構築できるようになるだろう。

さらに、わずかなテキスト情報から高精度な推定を行える点は、データ収集や人手による分析コストの削減にもつながり得る。特に、短期経済予測の制度設計や市場アナリストの意思決定支援ツールとしての応用が期待できる。

一方で、AIに過度に依存するリスクも見逃せない。
AIが読み取る「ストーリー」はあくまでテキストベースの解釈であり、実体経済との乖離が生じる可能性もある。ブラックボックス化されたプロセスをどのように監査・検証するかは、今後の大きな課題となるだろう。

とはいえ今回の研究結果は、言語AIが従来の経済分析モデルに革命をもたらしつつあることを端的に示している。今後は欧州だけでなく、各国の中央銀行や金融機関にもこの手法が波及していく可能性が高い。

※2 PMI（購買担当者景気指数）：製造業やサービス業の景況感を示す先行指標。企業の購買担当者への調査に基づき、経済の拡大・縮小を判断する材料となる。