米テキサスにAI時代の“発電所”誕生へ 原子力併用で世界最大級データ・エネルギー複合施設

2025年6月26日、米テキサス州のエネルギー企業ファーミ・アメリカが、同州アマリロに世界最大級となるAI用データセンターとエネルギー施設を一体化した「ハイパーグリッド」建設計画を発表した。再生可能エネルギーに加え、原子力も併用する先進的な複合拠点として注目される。
AI時代を支える「超発電」施設がテキサスに誕生
AI計算需要の爆発的な拡大を背景に、ファーミ・アメリカは次世代型の大規模インフラ構想を打ち出した。テキサス州アマリロに建設されるこの施設は、最大11ギガワット(GW)の発電能力を備え、AIデータセンターと直接連携する“エネルギー・デジタル複合体”として設計されている。
発電源には原子力、天然ガス、太陽光を組み合わせるハイブリッド方式を採用。第1段階として、2026年末までに1GW分の出力を稼働させる計画だ。発電能力の規模から見ても、AIインフラ単独としては世界最大級とされる。
この「ハイパーグリッド」構想は、元米エネルギー長官のリック・ペリー氏らが創業したファーミ・アメリカが主導。プロジェクト開始は2025年7月4日を予定し、テキサス工科大学との連携も発表された。
米紙『ワシントン・ポスト』によれば、同施設には原子炉4基(出力合計1GW)の建設申請が行われているという。原子力規制委員会(NRC)もすでに申請を受理しており、審査結果の発表が近く予定されている。
AI・エネルギー競争の火花 米中対立が背景に
このプロジェクトの背景には、米中間で激化するAI・インフラ競争がある。ペリー氏は、中国では現在22基の原子炉が建設中だが、米国では皆無と指摘。「われわれは出遅れている」と警鐘を鳴らした。AI時代において、演算力の源である電力確保の重要性を強調する。
AIモデルの高度化には膨大な電力が必要であり、従来の電力インフラでは供給が追いつかないとの見方が強い。そのため、安定供給と脱炭素の両立を可能にする原子力の再評価が進む中、今回のような複合施設は新たな潮流を象徴するものと考えられる。
とはいえ、原子力には安全性や放射性廃棄物の処理といったリスクも伴う。資金調達手段や総工費の詳細が未公表であることも、投資家や政策当局の注目点となるだろう。
今後、テキサス発のこのプロジェクトが成功すれば、他州や海外でも類似の取り組みが加速する可能性がある。エネルギー主導型AI拠点という概念が新たなスタンダードとなるか、今後の展開が注目される。