日立製作所、大みか事業所に生成AIエージェント導入 品質保証業務を9割効率化

2025年6月26日、日立製作所は茨城県日立市の大みか事業所において、品質保証業務に生成AIエージェントを導入したと発表した。
実証を通じて、トラブル対応の情報検索時間を約90%削減し、若手担当者の即応力強化に寄与する結果が得られた。
品質保証業務に生成AI 検索時間を約90%短縮
日立製作所は、電力・鉄道・上下水道など社会インフラに関わる機器の品質保証業務において、生成AIエージェントの導入効果を確認した。
対象は同社の大みか事業所(茨城県日立市)で、2024年10月から2025年3月にかけて実証実験を実施。6月26日にその成果を発表した。
従来の品質保証業務では、機器トラブル発生時に過去の類似事例や技術資料を手動で検索し、適切な対策を導出する必要があった。だが、その判断には熟練者の勘や経験といった暗黙知が不可欠であり、若手担当者による迅速な対応が困難だった。
今回の実証では、既存の支援ツールに生成AIを統合し、熟練者が活用する検索パターンや情報探索プロセスを形式知として学習させた。
鉄道システムにおける実証では、問い合わせ内容をAIが理解し、類似ドキュメントの表示や質問文の提示を通じて、経験を問わず短時間での対応が可能となった。
その結果、検索時間が約9割削減されただけでなく、顧客満足度向上につながる初報レポートの迅速作成も実現。品質保証業務の高度化と効率化において大きな進展が見られた。
ナレッジの共有が加速 AIが属人化の壁を突破へ
今回の導入により、品質保証における知見や対応ノウハウの属人化という課題の解決に道が開かれた。AIが過去のトラブル対応記録や時系列データを分析・表示することで、ナレッジの共有が促進されたことが確認されている。
熟練者が不在の場合でも、AIが初動対応に必要な情報を提示できるようになった点も注目に値する。
今後は、顧客自身がトラブル情報へ直接アクセスし、24時間体制での初期対応が可能となる構想も検討されている。これにより、経験の浅い担当者でも初報作成のドラフトを短時間で出力でき、業務の平準化と属人性排除が進むと見られる。
また、発生傾向などの特徴量をAIが抽出することで、問題の予兆把握や製品ごとの弱点分析も容易になると期待されている。
日立は、2026年度を目標に、鉄道システムにとどまらず、電力や上下水道など大みか事業所全体の品質保証業務への生成AIの活用範囲を拡大していく構えだ。