アンソロピックの生成AIによる書籍無断使用、米連邦地裁が合法と判断　著作権侵害は否定

2025年6月23日、米カリフォルニア州連邦地裁が、生成AI企業アンソロピックによる書籍の無断使用は著作権侵害に当たらず、「フェアユース」に該当すると判決を下した。生成AIの著作権問題に大きな影響を与える可能性がある。

生成AIに書籍を無断学習させた行為を「フェアユース」と認定

米新興AI企業アンソロピックが提供する生成AIが、著作権で保護された書籍を無断で学習データに使用したことに対し、3人の米作家が訴訟を起こしていた。原告は2024年8月に、同社が著作物を大規模に盗用したと主張した。

判決によれば、アンソロピックは通常の書籍購入に加え、海賊版サイトから700万冊以上の書籍を無料でダウンロードし、生成AIの学習に用いた。
裁判所は、AIが原告の作品をそのままコピーしたり模倣したわけではなく、合法的に購入したものであれば著作権法の「フェアユース」に該当すると判断した。

「フェアユース」は、批評・教育・研究などの目的で著作物の一定利用を認める米国著作権法の例外規定で、生成AIの学習がこれに含まれるかが争点だった。今回の判決は、生成AIの学習に関して具体的にフェアユース適用を認めた初めての裁判例とされる。

ただし、海賊版書籍を利用した点については正当性が認められず、著作権者に対する損害賠償責任は今後の審理で争われる見込みだ。

生成AIの法的地位確立へ　メリットとリスクの両面を見据える必要性

今回の判決は、生成AIが著作権侵害に当たらないとの法的解釈を示した点で、AI技術開発の先行きに大きな影響を与える。企業は安心して大量のデータを用いたAI学習を進めやすくなる一方、著作権者の権利保護に対する懸念も強まる。

メリットとしては、AIの革新スピードが加速し、対話型AIやクリエイティブ分野での新サービス創出が期待される。研究や教育の分野でも生成AI活用が促進される可能性が高い。

一方で、著作物の無断利用による損害賠償リスクや、著作権者の利益が十分に守られない問題が残る。海賊版書籍の利用問題は別途争点となるため、法的なグレーゾーンが依然として存在すると言える。

今後は、著作権法の見直しやAI開発のルール整備が進み、著作権者・AI企業双方の利益を調和させる必要がある。技術の発展に伴う社会的・倫理的課題も議論され、生成AIの持続可能な成長に向けた法制度の進化が求められる状況だ。

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