AI教材「Qubena」、宮崎市の教育ダッシュボードと連携 1.7万人分の学習データが可視化へ

2025年6月24日、株式会社COMPASSは、同社が提供するAI型教材「Qubena(キュビナ)」の学習データを宮崎県宮崎市の教育ダッシュボードと連携することを正式に発表した。これにより、市内の全小中学校で日々蓄積される学習履歴がより高度な分析と可視化に活用される。
AI教材と教育行政が連携 膨大な学習データがダッシュボードで活用可能に
COMPASSが発表した今回の連携は、教育データの利活用を加速させる重要な一歩である。宮崎市では2021年6月から市内の全小中学校72校でQubenaを導入しており、現在およそ1万7千人の児童生徒が同教材を使用している。
Qubenaは、AIを活用して一人ひとりの習熟度に応じた最適な問題を出題する機能を備えている。
新たな取り組みでは、Qubenaに蓄積された日々の学習データを、宮崎市が運用する教育ダッシュボードと直接連携。対象となるデータ項目は多岐にわたり、問題ごとの正誤、解答時間、解説閲覧時間、習熟度スコアなどが含まれる。
こうした情報により、教育現場では個々の進捗をより精緻に把握し、指導方針の柔軟な見直しが可能になる。
一般的な教育ツールでは、こうした細かなデータ連携が難しいケースが多いが、Qubenaはその制約を超えた対応が可能だという。
COMPASSはこれまでにも、MEXCBT(※)や校務支援システム「C4th」、デジタル教科書、教育プラットフォーム「まなびポケット」などと連携実績を積み重ねており、高知県や奈良市、久喜市など複数の自治体と協働してきた。今回の宮崎市との連携も、こうした既存事例の延長線上にある。
同社によると、2025年6月時点でQubenaは全国170以上の自治体・2,300校で導入されており、100万人以上が利用。累計解答数は30億件を超える。
※MEXCBT(メクビット):文部科学省が構築する「学びの保障オンライン学習システム」。全国共通のCBT(Computer Based Testing)環境を提供する仕組み。
データ活用で個別最適学習を後押し 進む自治体連携と問われる情報倫理
QubenaのようなAI型教材と教育ダッシュボードの連携は、自治体教育の個別最適化を現実のものとする可能性がある。日々の学習データを行政単位で集約・分析できれば、学力分布や課題領域の早期発見、効果的な施策立案に結びつく。宮崎市のように全校導入が進んでいる地域では、教育政策と教室現場をデータで結びつける意義は大きい。
一方で、課題もある。学習履歴は児童生徒にとって極めてセンシティブな個人情報であり、匿名化処理や第三者提供制限、目的外利用の防止など、データ倫理への配慮は不可欠である。AIの出題傾向やアルゴリズムに対する過信が、人間の判断を圧迫するリスクも懸念される。
今後、教育とテクノロジーの融合はさらに進むとみられ、今回のような高度な連携事例は全国的なモデルケースになる可能性がある。特に人的リソースの限られる地方自治体においては、こうしたAI教材の導入と運用ノウハウの共有が、教育格差の是正に寄与する展開も期待される。