メタが汎用人工知能開発へ ザッカーバーグ氏が個人主導で採用強化

2025年6月10日、米メタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が、人間を超える能力を持つ「汎用人工知能(AGI)」の実現に向けて専門チームを新たに立ち上げていると、ブルームバーグ・ニュースが報じた。
ザッカーバーグ氏、AGI実現のため個人主導で50人規模の採用を計画
マーク・ザッカーバーグ氏が進める新たなAGI(※)チーム構想は、自社の大規模言語モデル「Llama 4」に対する不満が背景にあるようだ。ブルームバーグの報道によれば、同氏はこの不満を解消するため、個人的に約50人のAI分野の専門人材を採用する計画を明らかにした。
この新チームには、AIスタートアップ企業スケールAIへの投資も関連しており、同社創業者であるアレクサンドル・ワン氏が、取引完了後にAGIチームに加わる見通しだ。
スケールAIは、AIのトレーニングデータ提供やモデル評価で知られる企業である。
ザッカーバーグ氏の個人主導による今回の人材採用は、従来の企業内方針とは一線を画しており、AGIに対する本気度の現れとも受け取れる。
こうした動きは、米国IT業界全体におけるAGI開発競争が次の段階に入ったことを示唆している。GoogleやOpenAIもAGIの実現を目指している中、メタがどこまで追随し得るか、注目したい。
※AGI(汎用人工知能):特定のタスクだけでなく、人間と同等またはそれ以上の知能で多様な課題に対処できる人工知能。現時点では理論・研究段階にあり、実用化には技術的・倫理的な課題が多い。
今後の展望、事業モデル刷新や人材流動も加速か
今回のAGIチーム新設は、メタの事業モデルや社内人材の在り方にも大きな影響を与える可能性がある。AGIが実現すれば、既存の広告・SNS事業にとどまらず、メタバースやデジタルコンテンツ制作分野への応用も視野に入るだろう。
顧客接点やデータ活用の質が根本的に変わることもあり得る。
また、50人規模の専門チーム結成は、AI技術者の流動性を高め、他社スタートアップからの人材流入を呼び込む可能性もある。
特に、スケールAI創業者ワン氏の参加は、業界から注目を集めると予想できる。メタのAGI戦略に対する信頼感を補強するものとなるだろう。
ただし、AGI開発には、莫大な研究費用や倫理面でのリスクも伴うと考えられる。
自律的なAIシステムが社会・経済に与える影響は未知数であり、規制や国際協議の議論が進む中での開発には慎重さが求められる。
今後、メタのAGI開発進展に応じて、グローバルIT業界の競争構造が大きく変化する可能性も否定できない。AI人材争奪戦の激化や関連技術への投資増加などもあり得る。
市場全体に波及する影響は計り知れないものとなるだろう。