日本発AI企業「Third Intelligence」設立 松尾豊教授らがAGI開発を本格化

2025年6月5日、東京大学の松尾豊教授が中心となり、次世代型AI開発企業「Third Intelligence」を設立したことが発表された。
新会社はAGI(汎用人工知能 ※)の実現を目指し、日本発の技術で世界に挑む構えだ。
松尾教授、「第三の知能」掲げ新会社設立
東京大学大学院の松尾豊教授らは、東京都文京区にAIスタートアップ「Third Intelligence」を立ち上げたことを発表した。
松尾豊教授は、AIやディープラーニングの専門家として、2023年には内閣府のAI戦略会議座長を務めるなど、国内の第一人者として活躍している。
松尾研究室で進めていたAIプロジェクトを外部に切り出し、独立した形で本格的な事業化を図る。
松尾氏自身は創業者兼Chief Scientistとして関与し、エウレカの元CEOである石橋準也氏がCEOに就任。
さらに、参院選出馬を表明しているAIエンジニアの安野貴博氏が社外取締役として名を連ねた。
社名の「Third Intelligence」は、人間の知能と既存のAIに続く“第3の知能”の創出という理念を示すもので、米中が先行するAI開発競争に対抗する「第3極」を標榜している。
同社は研究者・開発者の採用を積極的に進めており、グローバルな競争に本格参入する。
「第3極」としての日本の存在感が問われる
Third Intelligenceの設立は、日本のAI産業にとって大きな転機となる可能性がある。
特に注目すべきは、研究に特化した学術機関の知見を民間企業にスピンオフさせ、AGIという未踏の領域に挑む点である。
松尾教授は「これまでと全く異なるAIの研究開発」を行うとしており、構造的・発達的アプローチによる新基盤の構築が期待される。
一方、米中における大規模資本の支援体制やデータ環境と比べると、日本のAIスタートアップは資金面・政策支援面での課題が残る。
第三の知能を掲げる構想が実用段階に達するには、産官学の連携と持続的な投資が不可欠である。
今後、このスタートアップがどれほどインパクトを与えうるかは、幅広い連携にかかっていると言えよう。
※AGI(汎用人工知能):人間のようにあらゆる知的作業をこなすことが可能な人工知能。
特定の用途に限定される従来のAI(狭義AI)とは異なり、複数のタスクに柔軟に対応できるとされる。