米AI検索広告、2029年に約260億ドルに到達か　イーマーケター調査

2025年6月4日、米調査会社イーマーケターが、AIを活用した検索広告支出が2029年までに約260億ドルに達するとの予測を出したとロイターが報じた。
今年の市場規模は10億ドル強にとどまるが、技術進化とターゲティング精度の向上により、米国市場で急成長を遂げる見通しだ。

AI検索広告が急成長　市場シェアは5年で13倍以上に

イーマーケターの最新調査によれば、2025年のAI検索広告（※）支出は全検索広告市場の約1％に過ぎないが、2029年には13.6％まで拡大する見込みだという。
金額にして、今年の10億ドル強から5年間で260億ドル近くまで増加することになる。

この急増の背景には、生成AIや自然言語処理を活用した高度なターゲティング技術がある。
従来のキーワードベース広告では実現できなかった文脈理解やユーザー意図の推定が可能となり、広告効果の最大化が期待されている。

また、金融、テクノロジー、テレコム、ヘルスケアといった業界が積極的にAI検索広告を取り入れており、広告配信の自動最適化や高精度なパーソナライズが売上拡大に寄与している。
一方で、小売業界の導入は遅れており、AI投資への慎重姿勢が目立つとのことだ。

※AI検索広告：人工知能（AI）を活用し、ユーザーの検索意図や行動履歴などから最適な広告を自動で表示する手法。従来のキーワードベース広告に比べ、文脈理解とパーソナライズに優れている。

従来型サイトに逆風　AI広告が変える広告市場の構図

AI検索広告の普及により、従来の広告モデルを展開してきた企業は大きな転換を迫られている。
イーマーケターのアナリスト、ミンダ・スマイリー氏は「従来型サイトはAI検索による痛みを感じている。トラフィックを失う中、サブスクリプションや有料のAIライセンス契約に傾倒している」と現状を分析する。

従来のような、キーワードベースの検索広告に頼っている企業は、AIにコンテンツを要約されることで、検索経由の流入が激減するリスクに直面している。

一方で、AI検索広告は、精緻なユーザー理解に基づいた広告配信によって、コンバージョン率の向上や無駄な広告費削減につながるというメリットがある。

今回報じられたようなトレンドは、単なる広告手法の変化にとどまらず、検索体験そのものの再編を促す可能性が高い。
とりわけ、生成AIによる「回答型検索」が主流化するにつれ、従来の「リンク集型検索」との力関係は逆転していくと考えられる。

一方で、こうしたAI中心の広告エコシステムに適応できない企業は、ますます可視性を失っていく。
とりわけデジタル投資に慎重な事業者にとっては、格差の拡大が避けがたい局面に入るだろう。
広告分野でも“AIリテラシー格差”が経営戦略に直結する時代が到来しつつある。