弘前大学は手術支援ロボットを使い、離れた場所から医師が手術を支援する遠隔手術の臨床応用を国内で初めて開始した。青森県内の病院を商用光回線で接続し、実際の患者を対象に安全性と有用性を検証する。
弘前大、ロボットによる遠隔手術を臨床応用
弘前大学の2026年10月14日付のプレスリリースによると、この取り組みでは同大学医学部附属病院と、青森県五所川原市のつがる西北五広域連合つがる総合病院を、NTT東日本の商用光回線「Interconnected WAN」で接続する。
手術支援ロボット「hinotoriサージカルロボットシステム」を使い、離れた場所にいる医師が手術を支援する仕組みだ。
対象は、同ロボットによる手術の適応となる消化器がんの患者で、実際の治療での安全性を評価する。弘前大学は2026年8月に第1例目を行い、これまでに計5例の遠隔手術を安全に実施したという。
背景には、国内の外科医不足に加え、高度な手術を担う専門医が都市部などに偏在する課題がある。遠隔手術は、通信ネットワークを通じて経験豊富な指導医が地域の外科医を支援する手段として期待されている。
今回の臨床応用は、日本外科学会が進めてきた「手術支援ロボットを用いた遠隔手術の実現に向けた実証研究」の成果を基盤としている。2020〜2024年度に日本医療研究開発機構(AMED)の事業として実施され、通信遅延や回線の安定性、ロボットの安全な操作、緊急時の対応などが検証された。
こうした研究成果を踏まえ、「遠隔手術ガイドライン第2版」に沿って特定臨床研究として実施している。
本研究は、弘前大学総合臨床研究審査委員会の承認を受け、臨床研究等提出・公開システムにも登録済みだ。
なお、弘前大学は2026年10月14日に同大医学部附属病院で記者会見を開き、臨床応用までの経緯や今後の展望、医療現場の課題について説明している。
地域医療への利点と普及に向けた課題
遠隔手術が実用化されれば、専門医が少ない地域でも高度な手術に関する支援を受けやすくなる可能性がある。患者が遠方の医療機関まで移動する負担を抑えながら、住み慣れた地域で専門性の高い治療を受けられる環境につながるだろう。
地域の外科医にとっても、経験豊富な医師から手術中に支援を受けられることは、技術や知識を共有する機会になりうる。こうした仕組みが継続的に運用されれば、医師の地域偏在を補い、地域医療の体制を支える一助になると考えられる。
一方、通信障害や遅延が手術に影響する事態を防ぐには、技術面の対策に加え、異常発生時に現場の医師が迅速に対応できる体制作りも必要となるはずだ。
通信設備やロボットの導入・維持にかかる費用も、医療機関が継続的に運用するうえで検討すべき課題になりうる。
今後の普及に向けては、症例を重ねて安全性と有用性を確かめるとともに、適用できる手術や医療機関の条件を明確にすることが重要になるだろう。
技術の性能に加え、病院間の連携や費用対効果も評価できれば、遠隔手術が地域医療を支える選択肢として定着するかもしれない。
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