2026年9月29日、日本のオムロン株式会社は、生成AIを活用した制御設計・保全支援ソフト「CX-One Agent」を同年11月4日から提供すると発表した。熟練者のノウハウを構造化し、業務工数の50%以上削減を狙う。
過去資産とAIの統合で効率化 熟練者の記憶頼みから脱却する現場革新
オムロンが発表した「CX-One Agent」は、プログラムソフトウェア「CX-One」と連携し、製造現場での制御機器設計や保全業務を支援する新ソリューションである。
日本の製造業現場では人手不足が深刻化する中、限られた人財で設備を設計・稼働させることが求められている。特に制御機器であるPLC(※)の設計においては、過去の膨大なプログラム資産の解読や流用が担当者の記憶や経験に依存しており、課題となっていた。
本製品は顧客のプログラム資産と同社の技術情報やマニュアルをAIで組み合わせて活用する。キーワードが分からない場合でも自然言語による検索が可能で、評価事例では流用プログラムの特定作業を従来の2週間から4日に短縮した。
さらに、プログラムをセクション単位で要約し処理フローを可視化することで、仕様書が不十分なプログラムの解読も容易にする。改造箇所の特定作業は2ヶ月から4日に短縮された。130以上のマニュアルを横断検索する機能も備えるほか、ハードウェアとしてPLC「CJ3M」やプログラマブルターミナル「NS-B」の発売も同時に発表されている。
※PLC:プログラマブルロジックコントローラの略。工場などの製造設備や機械を自動制御するために用いられる制御用装置のこと。
暗黙知の可視化がもたらす光と影 人間とAIの協調が描く将来像
オムロンが目指す「GEMBA DX」の一環である本取り組みは、これまで特定個人の頭の中にのみ存在していた熟練者の知見やノウハウを構造化し、活用可能なデータへ変換する点に大きな価値が見出せる。
導入によって期待される最大のメリットとしては、熟練技術者への過度な依存を解消し、経験の浅い技術者を早期に戦力化できる点が挙げられる。これまで解読に多大な時間を要していたブラックボックス的なプログラムが可視化されることで、業務の継承性や生産性は飛躍的に向上すると考えられる。
一方で、懸念すべきリスクや潜在的なデメリットも挙げられる。AIが出力した検索結果やプログラムの要約に対して、最終的な精度検証を行う人間のチェック体制をどう標準化するかという点が課題となる可能性がある。AIによる解釈を過信しすぎると、設計上の微細な確認漏れにつながる懸念も否定できない。
将来の展望として、オムロンは異常コードの解析やAIによるプログラム自体の生成など、支援領域の更なる拡大を掲げている。単なる検索や解説の枠を超え、設計から立ち上げ・保全に至るプロセス全体をAIと人間が協調して担う新たな製造現場の姿が広がっていくだろう。
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