2026年8月31日、NTT東日本と神奈川県横須賀市は、災害対策本部における自治体職員の意思決定支援に向けた生成AIの実証実験を開始した。同市危機管理課が参加し、AI活用の有用性を比較検証する。
生成AIで災害対策本部の判断を支援 職員の経験差補完を目指す
NTT東日本と横須賀市は、激甚化する自然災害や発災直後の情報集中に対応するため、生成AIによる意思決定支援の実証に着手した。発災直後の対策本部には被害や避難所に関する膨大な情報が押し寄せるが、限られた人員と対応者の経験差による判断の遅れが自治体の共通課題とされている。特に地理的制約の大きい三浦半島地域では、迅速な優先順位づけと関係機関との連携が欠かせない。
2026年8月31日に実施された共同ワークショップでは、三浦半島断層群地震を想定したシナリオを使用。横須賀市危機管理課の職員が「AI支援なし」と「AI支援あり」の双方で対応策を検討し、処理速度や判断精度、対応の網羅性を比較検証する。システムには地域防災計画および実務ガイド『災害対応オペレーションBOOK47(※)』を参照させ、最適な連携先や対応内容の案を提示させる。横須賀市が実証フィールドと実務知見を、NTT東日本がAIアプリ構築と評価を担当し、配属年数や経験による効果の差異も分析していく方針だ。
※災害対応オペレーションBOOK47:東京大学生産技術研究所附属災害対策トレーニングセンター(DMTC)の沼田宗純准教授の知見に基づき、現場の災害対策業務を8分野47種に体系化した実務ガイド。
意思決定の迅速化と属人化解消に期待 ハルシネーション克服が課題
本取り組みは、自治体における災害対応の迅速化と平準化という面で大きなメリットをもたらすと考えられる。生成AIが専門的な実務ガイドや防災計画を即時に参照・整理することで、ベテラン職員が培ってきた経験知の継承や、経験の浅い職員の判断補完につながる可能性があるからだ。さらに、複数機関への同時展開や指示文案の作成を自動化できれば、人手不足が常態化する現場での負担軽減にもつながるだろう。
一方で、運用上のリスクや課題も無視できない。生成AI特有のハルシネーション(事実と異なる出力を生成する現象)によって誤った優先順位が提示された場合、混乱を招く可能性があるからだ。また、職員が提示された回答に依存しすぎると、突発的な現場の変化に応じる柔軟性を損なうリスクも懸念される。
今後は、AIの出力を過信せず最終判断を人間が行う運用体制の確立や、職員の訓練支援ツールとしての活用といった展開が期待される。技術的精度向上と人間側の判断力醸成を両立できるかが、防災DX(※)成功の鍵を握るだろう。
※防災DX:防災分野にデジタル技術を掛け合わせ、災害時の対応スピード向上や業務効率化、被害の最小化を目指す取り組み。
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