霧島酒造、現場主導のアプリ開発で業務効率化を実現 「FileMaker」と「iPad」使用

Claris Internationalの2025年3月27日の発表によると、宮崎県都城市の焼酎製造会社・霧島酒造は、ローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」とiPadを活用し、現場主導でアプリ開発を内製化している。
デジタル化の必要性とツール選定の背景、アプリ導入後の成果
霧島酒造は、主力商品「黒霧島」をはじめとする焼酎の製造を行っている。
同社では、焼酎製造過程で発生する焼酎かすの管理や機械整備の記録を手書きで行っており、データの転記や写真の管理に多くの手間がかかっていた。従来のアナログな手法では、転記ミスや入力漏れが発生しやすく、業務効率の低下が課題となっていた。
現場の担当者は、リアルタイムで報告書を作成できるツールの導入を検討し、複数のノーコードおよびローコード開発ツール(※)を比較した。
その結果、操作性やコストパフォーマンス、内製の容易さ、拡張性を考慮し、今回FileMakerを選定した運びだ。
この選択により、iPadやiPhoneを使用して、現場でデータ入力や写真登録を行うことが可能となり、報告書作成と巡視点検の効率化を目指す。
アプリ開発は、まず1名の担当者がFileMakerの無料評価版を使用して開始された。その後、もう1名が加わり、計2名で報告書作成アプリの開発が進められた。
現場主導のアプローチにより、実際の業務に即した機能を持つアプリケーションの構築が可能となった。
新しいシステムの導入により、以下の成果が得られた。
まず、データ入力から報告書作成までを現場で完結できるようになり、作業工数が約25%削減された。
次に、手書きからデジタル化に移行したことで、転記ミスや入力漏れが大幅に減少した。さらに、記録確認を通知するメール送信機能により、連絡ミスも減少し、コミュニケーションの改善が図られた。
※ローコード開発プラットフォーム:最小限のコーディングでアプリケーションを開発できるツールや環境を指す。専門的なプログラミング知識がなくても、業務に適したアプリケーションを迅速に構築できる。
今後の展望
霧島酒造が進めているような“現場主導型DX”は、今後さらに多くの中堅製造業に波及していく可能性が高い。特に、少人数の現場でも内製アプリによる業務改善が行えるという事例は、全国の中小企業にとって非常に参考になるだろう。
現場の知見をITで形式知化し、業務を最適化していくアプローチは、製造業における属人性の排除と標準化に直結する。
一方、DXが進展するにつれて、システム間のデータ連携やセキュリティ面での対策がより重要になると考えられる。今後はFileMaker単体での運用だけでなく、他のクラウドサービスや業務基幹システムとの連携が求められる局面も増えていくだろう。
また、社内全体でIT人材を育成する仕組みや、データを活用した経営判断に繋げる体制の構築も課題となる。
総じて言えば、今回の取り組みは「現場が動けば会社が変わる」ことを実証した好例だ。今後は、データ活用の深化と、デジタルを軸にした企業文化の再構築がどこまで進められるかが、次の成長フェーズの鍵になると見られる。