KDDIが「Starlink Direct」の提供をau以外でも開始 “圏外ゼロ”時代へ一歩近づく

2025年5月7日、KDDIは米SpaceXの衛星通信ネットワーク「Starlink」と直接接続可能な新サービス「Starlink Direct」をau以外のユーザーにも開放した。
「Starlink Direct」の仕組みとau以外のユーザーに開放する狙い
KDDIが発表した「Starlink Direct」は、地上基地局を介さずスマートフォンと衛星が直接通信する画期的なサービスだ。
地球低軌道を周回する衛星ネットワーク「Starlink」との提携により実現したこの仕組みは、通信インフラの脆弱な地域や災害時のバックアップ回線として強い関心を集めている。
今回、本サービスがauユーザーに限らず、他社回線を利用するユーザーにも開放された。
料金は月額1650円だが、UQ mobileの一部プラン利用者は月額550円に抑えられている。
さらに、2025年6月30日までの加入者は、6カ月間無料で使用できる優遇措置が設けられている。
注目すべき機能は、空が見える場所ならどこでもテキストメッセージの送受信が可能な点だ。AndroidではSMSとRCS(※)、iPhoneではSMSとiMessageに対応している。
さらに、位置情報の共有や緊急情報の受信にも対応しており、安全性と利便性を同時に提供する設計となっている。
Android端末ではGoogleのAIアシスタント「Gemini」とのテキスト連携も可能となり、ビジネス用途や外出先での簡易操作にも活用できる。
本サービスを利用できるデバイスは、Google Pixel 9シリーズとiPhone 14以降の計18機種である。
また、すべてデュアルSIM対応が必須条件とされている。これは、既存の通信回線と本サービスを併用する構造によるものだ。
申込はau取扱店またはオンラインショップで受け付けており、契約時の事務手数料3850円は、後日au PAYで還元される。
※RCS(Rich Communication Services):SMSを進化させた次世代通信規格で、Wi-Fiやモバイル通信を利用した画像・動画・既読確認などが可能なテキストメッセージ機能。
「圏外」が過去になる未来 衛星通信がもたらす新たな競争と課題
「Starlink Direct」がau以外のユーザーにも開放されたことにより、「どこでもつながる」がさらに現実的なものとなるだろう。特に、日本のように自然災害が頻発する国において、非常時でも最低限のテキスト通信が確保できる意義は極めて大きい。
一方で、サービス利用にはデュアルSIM(※)対応機種が必要なことや、対応端末が一部の最新モデルに限定されている点は、現時点では大きな制約だ。
エントリー端末を所持しているユーザーや、旧端末利用者にはハードルが高いため、普及には時間を要すると思われる。
それでも、AIアシスタントとの連携機能や緊急情報の即時受信など、既存通信網では難しかった体験の提供は、一定の支持を集めるだろう。
今後、通信速度の向上や通話対応への拡張が行われれば、携帯通信の枠組みそのものを再定義する可能性もあるのではないだろうか。
au Starlink Direct
https://www.au.com/mobile/service/starlink-direct