JPYCが切り開くステーブルコインの未来、健康経営から脱炭素、建設業界まで広がる活用の可能性
JPYC株式会社(以下、JPYC社)は、日本円連動のステーブルコイン「JPYC」を発行することで、暗号資産市場と現実社会を繋ぐ重要な役割を果たし、2024年11月時点で累計発行金額が30億円を突破し国内外でのユースケースを広げています。
ステーブルコインの透明性や利便性を活用し、健康経営モデルや建設業界向けサービス「GOヘイ!」の実証実験を進めるほか、カーボンクレジット市場への参入も行っています。
国内外で注目されるこれらの取り組みが、どのように社会のジレンマを解決するか、本プロジェクトの詳細を考察します。
社会のジレンマを突破するJPYC株式会社
JPYC社は2019年11月に設立され、2021年1月27日には、日本で初めてのERC20規格を用いた自家型前払式支払手段として、日本円と価値が連動するステーブルコイン「JPYC」を発行および販売しています。
また、ブロックチェーン推進協会(BCCC)や日本資金決済業協会に加盟しており、2024年11月18日には「JPYC」の累計発行金額が30億円を超える成果を達成しました。さらに、相性の良い企業や官公庁、自治体と連携を深めることで、社会の抱えるジレンマを解決することを目指しています。
ステーブルコインを活用したエコシステム
JPYC社は2023年11月に、三菱UFJ信託銀行およびProgmatとの提携を発表しました。この提携を通じて、「Progmat Coin」を基盤とした「JPYC(信託型)」の発行を計画しています。
今後は、資金決済法の改正を踏まえ、資金移動業や電子決済手段等取扱業のライセンス取得を目指す方針です。さらに、国内外のステーブルコインを交換可能にする取引サービスの提供を視野に入れており、発行事業と交換事業の両面を展開することで、ステーブルコイン領域における主要なプラットフォームの地位を維持・強化することを目指しています。
また、ステーブルコインが持つ透明性や低コストの送金という特長を活かし、より効率的なデジタル金融の革新を推進していく考えです。
日本円に連動されたステーブルコイン「JPYC」
日本円と価値が連動するステーブルコイン「JPYC」は日本円で購入することができ、NFTの購入や暗号資産を現実の場面で活用したい場合に利用して決済や物品交換が可能です。
ここでは、ステーブルコインであるJPYCの特徴について以下解説します。
パブリックブロックチェーン上で発行されるプリペイド型ステーブルコイン
JPYCは、Ethereum、Polygon、Gnosis、Shiden、Avalanche、Astarといった複数のブロックチェーン上で発行されています。利用時にはJPYC Appsを通じて1JPYC=1円として計算可能です。ERC20規格のトークンとして提供されているため、メタマスクなどのウォレットで個人が管理する形式になっています。
暗号資産ではなく前払式支払手段
JPYCは、会計処理の際に1JPYC=1円で固定して計算できる前払式支払手段に分類されるため、暗号資産よりも事業用途でのブロックチェーン活用に適しています。
日常の買い物にも活用可能
JPYCは「Vプリカギフト」などの交換サービスを通じて、インターネット上のVisa加盟店で世界中どこでもクレジットカードと同じように利用できます。日常的なショッピングにも役立つ仕組みを提供しており、3Dセキュアを利用する場合にはVプリカアカウントへの登録が必要です。
KlimaDAO JAPAN MARKET 実証実験に参加
JPYC社は、ブロックチェーンを活用したカーボンクレジットマーケットプレイス「KlimaDAO JAPAN MARKET」のベータ版実証実験に参加することを発表しました。この実証実験は、カーボンクレジットの透明性と流動性を向上させることを目標に掲げ、2024年11月から2025年2月末までの期間で実施される予定です。
このプロジェクトは、KlimaDAO JAPAN株式会社が主導し、株式会社オプテージが企業向けウォレットの提供を担当するほか、株式会社みずほフィナンシャルグループが実務サポートを提供し、株式会社PBADAOがプロジェクト管理および開発支援を行います。
実験の具体的な取り組みとして、グローバルで運用されている「Carbonmark API」を活用し、日本のJクレジットをブロックチェーン上でトークン化(Jクレトークン)する計画が進められます。Polygonブロックチェーンを基盤にERC-20規格のトークンとして発行されるJクレトークンは、1トークンが1トンのCO2削減量に対応する形となります。
実験はまずクローズド環境での売買から開始され、2025年春には一般公開が予定されています。
ブロックチェーン技術を導入することで、市場の透明性や信頼性を高めることが期待されており、従来のカーボンクレジット市場が抱える流動性不足や取引の不透明性、複雑な手続きといった課題を解決する狙いがあります。この取り組みにより、カーボンクレジット市場の活性化と気候変動対策のさらなる強化が見込まれます。
健康経営の実証実験を開始
JPYC社は、行動変容を促すWeb3アプリ「運動サプリ」の仕組みを活用した新しい健康経営の実証実験を開始しました。
従来の健康経営では、ウォーキングイベントなどで健康促進活動に参加する従業員にポイントやデジタルギフトが提供されてきました。一方、DAO型健康経営では、インセンティブとしてステーブルコインを活用することで、価格変動の影響を受けることなく安定した報酬を提供できます。日常生活での利用もシームレスに行える環境を構築し、健康経営の実践に適した仕組みを実現します。
さらに、従業員の健康活動への参加や、DAO内での貢献に対してもインセンティブを付与できる仕組みを構築しています。ステーブルコインはプログラマブルであり、こうした新しい取り組みの中で柔軟に活用可能です。
この新しい健康経営モデルでは、従業員間で自然と相互支援が生まれる文化を形成し、インセンティブ配布を通じて感謝や支援を共有することで、より参加しやすい環境を提供します。ステーブルコインは、その安定性と使いやすさにより、インセンティブとして最適な選択肢となり、従業員が報酬を日常的に利用することを実現できます。
また、従業員が自主的に健康増進活動に取り組める仕組みを提供し、コミュニティ内での励まし合いや情報交換によってモチベーションを高めます。さらに、ブロックチェーン技術を活用することで、健康活動の成果を可視化し、データ分析を基に施策を改善するほか、個別のフィードバックを行うことで、持続的な健康推進を支援します。
この実証実験は、DAOを活用した新しい健康経営モデルの確立に向けた第一歩であり、ステーブルコインの実社会でのユースケースを広げる重要な機会となり、多様化する働き方やWeb3業界のニーズに応える健康促進のモデルへと繋がります。
建築業界向けWeb3サービス「GOヘイ!」への実証実験に参加
JPYC社は、JPYCが株式会社UPBONDと株式会社ネクストフィールドが共同で開発・運用する建築業界向けWeb3サービス「GOヘイ!」の実証実験において、従業員向けインセンティブとして採用されたことを発表しました。
この実証実験は、兵庫県内の鹿島建設株式会社の現場で行われ、「GOヘイ!」の機能が現場の具体的なニーズや鹿島建設の課題に応じて拡張されました。さらに、株式会社セガ エックスディーの協力を得て、ゲーミフィケーションの要素が取り入れられ、作業を楽しみながら継続的に利用できる仕組みが構築されています。
2024年の労働法改正による36協定の労働時間制限強化に伴い、技能労働者の賃金減少が懸念されています。同時に、建設現場では効率的な運営が求められており、これらの課題に対応するためには新しい技術と作業手法の導入が不可欠です。この実証実験は、ゼネコンから技能労働者に直接インセンティブを付与する仕組みを導入することで、労働者の努力を適切に評価し、モチベーションの向上と現場の活性化を実現することを目的としています。
「GOヘイ!」は、Web3およびブロックチェーン技術を活用した次世代型建築DXプラットフォームです。このサービスでは、技能労働者がアプリを通じて相互に評価を行い、ポイント(トークン)を自動で獲得します。これらのポイントは、日本円連動のステーブルコイン『JPYC』に交換でき、将来的には現金のように使用することも可能になります。
この仕組みにより、技能労働者のモチベーション向上が期待されるだけでなく、現場運営の効率化も大きく進むと見込まれています。また、労働者のウォレットには信用情報が蓄積され、これにより銀行や保険会社のローン手続きが簡素化される未来を視野に入れています。
本実証実験は、個別企業の取り組みにとどまらず、建設業界全体で共有可能なシステムの基盤となることを目指しています。多言語対応や外国人技能者への支援、CCUS(建設キャリアアップシステム)との連携、資格情報や経験データの共有、他の建設業向けアプリや給与管理システムとの統合も視野に入れており、業界全体でのDX推進と技能労働者の地位向上を促進する計画です。
今後の展望
JPYC社は、地域経済活性化や環境問題の解決、新たな働き方の支援など、多方面でのブロックチェーン技術の活用を進めています。
これらの取り組みにより、JPYCはステーブルコインの可能性を広げ、社会課題の解決に貢献しています。以下では、JPYCの技術がどのように未来の経済や社会を変革していくのか考察します。
デジタル通貨による地方創生
JPYCのようなステーブルコインを活用することで、地域経済の活性化に向けた多彩な施策が可能です。地方自治体がJPYCを基盤に独自のデジタル地域通貨を発行する場合、地元商店や観光施設での利用を促進するインセンティブが提供され、地域内での資金循環が強化されます。
例えば、観光客がJPYCを地域通貨に交換することで、地元の特産品購入や宿泊施設での利用が推進され、地域経済に直接的な利益をもたらします。ブロックチェーン技術により取引が記録されるため、自治体や地元経済団体は、消費行動のデータを分析して地域の課題や機会を的確に特定できます。これに基づく政策立案や、新たな観光プロモーションの設計が可能となり、デジタル通貨が地域創生の新たな柱となる可能性があります。
また、災害時には、JPYCを用いた迅速な災害復興支援が期待されます。地域住民や事業者への支援金をステーブルコインで直接配布することで、即時性と透明性を確保しつつ、被災地の経済活動を速やかに再開できる仕組みへと繋がります。
公平で持続可能な働き方の実現
JPYC社が参加するDAO型健康経営や建設業界向けサービス「GOヘイ!」は、労働環境の透明性や効率性を高め、労働者の働きがいを向上させる新たな仕組みを提供しています。この取り組みは、特に技能労働者や非正規労働者の課題解決に役立つ可能性があります。
例えば、「GOヘイ!」では、技能労働者が現場での貢献度を相互評価し、トークンを獲得する仕組みを通じて、従業員間の感謝や支援の文化を醸成します。従業員が得たトークンはステーブルコインJPYCに交換され、日常の買い物や請求書の支払いに使用可能です。この仕組みにより、労働者は直接的な経済的メリットを得るとともに、報酬の透明性が確保されるため、企業との信頼関係が強化されます。
さらに、ブロックチェーン技術を活用したウォレットにより、技能労働者の評価や成果がデータとして記録され、他の現場や企業での採用にも役立てられます。この仕組みにより労働市場でのキャリア構築が促進され、労働者自身の価値が向上します。
また、DAO型健康経営では、従業員が健康活動を通じてトークンを獲得する仕組みを提供します。例えば、従業員が一定の歩数を達成したり、健康診断を受けたりすることでトークンが付与され、これがJPYCに変換されると、健康促進と経済的メリットが両立します。この仕組みは、多様化する働き方に対応しながら、企業全体の健康意識を向上させる鍵となるでしょう。
関連リンク
▼JPYC株式会社 公式HP
https://jpyc.co.jp/
▼JPYC株式会社 プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/54018
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