JALとNEC、羽田空港で自動運転バスと顔認証システムの実証実験を開始

2025年3月17日、日本航空(JAL)とNECは、羽田空港整備地区において自動運転バスと顔認証システムの実証実験を開始する。期間は同日から24日までの8日間で、バス運転手不足や業務の省人化を見据えた試みとなる。
システムの導入背景と実証実験の詳細
国内の公共交通機関では、近年バス運転手不足が深刻な問題となっている。特に、空港や駅などの交通結節点で運行本数の維持が求められており、自動運転技術の導入が解決策の一つとして注目されている。
こうした課題を踏まえ、JALとNECは羽田空港内での自動運転バスの実証実験を実施することを決定したとみられる。
今回使用されるのは、ティアフォー社の「Minibus」という自動運転レベル2(※)に対応した車両である。NECの通信技術とAIを活用した運転支援システムを搭載し、ドライバーが担ってきた乗車確認や案内業務の一部を自動化する。これにより、省人化を実現しつつ、業務効率の向上を目指す。
実証実験では、安全性の向上も重要な目的の一つとされている。
自動運転バスには「遠隔見守りシステム」が導入され、リアルタイムでの走行状況の確認が可能となる。システムにより、万が一のトラブルが発生した際も迅速な対応が可能となるほか、利用者の安全確保にもつながると考えられる。
また、JALグループの従業員を対象とした「顔認証乗車システム」の検証も行われる。
利用者は専用アプリを通じて事前に乗車を予約し、バス乗車時にはNECの顔認証技術を用いて本人確認を行う仕組みだ。
この技術は認証精度が高く、スムーズな乗降を可能にすることで、利便性の向上にも寄与すると見込まれている。
※自動運転レベル2:運転支援技術の一つ。車両が加減速やハンドル操作を自動で行うが、ドライバーが監視し必要に応じて操作を行う必要があるレベル。
期待される成果と今後の展望
今回の実証実験の成果によって、JALとNECは自動運転技術の本格的な社会実装に向けた検討を進める方針だ。特に、空港業務における自動運転の活用や、顔認証システムとの連携強化によるシームレスな移動の実現が期待される。
将来的には、空港以外の公共交通機関や商業施設への展開も視野に入る可能性がある。駅や大型ショッピングモールなど、利用者の多い場所での導入が進めば、より快適な移動体験が実現されるかもしれない。
一方で、懸念点も存在する。第一に自動運転技術の安全性に関する課題だ。今回導入されるのは自動運転レベル2であり、完全な無人運行には至らないため、最終的な省人化の効果には限界がある。
また、顔認証システムについても、利用者のプライバシー保護やデータ管理の厳格化が求められる。特に生体情報を扱う以上セキュリティ面での管理が不可欠であり、不正アクセスやデータ流出のリスクをどう防ぐかが重要だ。
これらの課題がクリアされなければ、社会全体への本格導入には慎重な検討が必要だろう。
総じて、JALとNECの取り組みは、日本の交通インフラの変革を促す可能性を秘めている。技術の発展とともに、実用化への道筋がどう描かれるかが今後の焦点と言えよう。