【Progmat Coinとの提携を発表】ブロックチェーン間の取引を安全に、よりスムーズに クロスチェーンプロジェクト「TOKI」の概要
6/1に改正資金決済法が施行され、ついに日本でも法定通貨を裏付けとするステーブルコインが発行可能になりました。そのタイミングに合わせて、三菱UFJ信託銀行株式会社、クロスチェーン技術について実績と技術知見を持つ株式会社Datachain、パブリックブロックチェーン間でクロスチェーン取引を可能にする「TOKI」を提供するTOKI FZCOの三社での提携も発表されています。
三菱UFJ信託銀行が中心となって開発しているステーブルコイン発行管理基盤である「Progmat Coin(プログマコイン)」がTOKI・DataChainと提携することで、Ethereum等のパブリックブロックチェーンを含む各種ブロックチェーン基盤上でのステーブルコインの発行が想定されています。
今回はその中でもクロスチェーン取引の基盤となる「TOKI」の概要について、まとめてみましたのでぜひご一読ください。
TOKIの概要
TOKIは、安全なクロスチェーンインフラの構築を目指すプロジェクトで、異なるブロックチェーン間でトークンを交換したり、NFTを購入したり、レンディングプロトコルにデポジット(預金)することを可能にします。また、今回の提携で日本の金融機関との協力を通じ、法定通貨を裏付けとするステーブルコインを複数のブロックチェーン上で発行することも計画しています。
クロスチェーン取引における現状の課題
①Messagingの課題
クロスチェーンの活用には2つの大きな課題があります。一つはMessaging、つまり異なるブロックチェーン間での通信です。トークンブリッジの方法はいくつかありますが、双方のチェーン以外に新たなトラスト主体を必要としない「Light Client方式」は最も安全なクロスチェーン手法であると言われています。
しかし、お互いのチェーンで通信を検証し合うという性質により、新たなチェーンと接続する際にはお互いのチェーンに対応した「Light Client」の実装が都度必要となり、各チェーンが加速度的に接続していくための拡張が容易でないという課題があります。
また、現状では、ブロックチェーン間通信の検証に必要なガスコストも高いため、多くのユーザーにとって異なるブロックチェーン間での通信を行うことの制約になっています。
② Liquidityの課題
もう一つの課題はLiquidity、つまり流動性です。現在、異なるチェーンにトークンを移転しようとした場合、ラップドトークン(wrapped token)が利用されることが多く、ユーザは送信先のチェーンにある交換所で欲しいネイティブトークンと交換をします。
しかし、それには送信先チェーンでラップドトークンとネイティブトークンのペアの流動性がきちんと確保されている必要があり、流動性が乏しい場合は欲しいトークンを獲得するために何度もトークンスワップを強いられるということもあり、UXにも大きな課題が残っています。
TOKIがもたらすソリューション
TOKIは、MessagingとLiquidityの問題に対して、以下の解決策を提供しています。
①MessagingにおけるLCPの活用
TOKIは、CosmosエコシステムのIBC(Inter-Blockchain Communication)プロトコルと、TEE(Trusted Execution Environment)技術を組み合わせることで、LCP(Light Client Proxy)を構築します。
※TEE(Trusted Execution Environment)とは
「秘密にしたいデータを信頼可能な領域に配置し、その信頼可能な領域内でそのデータを用いた処理を完結させること」を実現するための技術
TOKIはIBCに準拠したライトクライアントの検証プロセスを、TEE(Trusted Execution Environment)と呼ばれるノードオペレーターであってもハッキングが困難であるセキュアな実行環境で代行します。これをLight Client Proxy、略してLCPと呼んでいます。
「LCP」では、検証対象のチェーンに対して、Proxyが検証側チェーンの代わりに「Light Client」検証を行い、その妥当性を低コストで検証可能にするProofを生成します。
そのため送信先のチェーンに対応した「Light Client」を新たに実装することが不要となることで、新たなチェーンへの対応が容易となり「拡張性の問題」が解決できるという仕組みです。
②TOKI Liquidityの活用
TOKIは、ユーザーにとって一度の取引でネイティブトークンスワップを可能にする統一された流動性を提供します。
TOKI Liquidityは仮想トークン・ペアによる流動性を提供することで、送信元チェーンでの特定の取引が送信先チェーンで成功することを保証する仕組みになっています。
また、TOKIはDEXやNFTマーケットプレイス、レンディングプロトコルなどのアプリケーションとの親和性に優れているため、アプリケーションをTOKIに組み込むことでユーザーにこのメリットを提供することができます。
ユースケース
TOKIでは以下のような活用ユースケースを想定しています。
Cross-chain swap
安定したコインをブリッジ通貨として、異なるチェーン間でトークンを交換することが可能
Cross-chain purchase
ユーザーは、「チェーンA」のNFTを「チェーンB」の任意のトークンで購入することが可能
Cross-chain lending
ユーザーは、チェーンAのトークンを使って、チェーンBのレンディングプロトコルに預けることが可能
TOKIの開発ロードマップ
TOKIが現時点(2023年6月)で発表している今後の開発ロードマップは以下の通りです。
2023年
Q2: IBCモジュール・LCPのテストネット完了 (Ethereum, BNB)
Q3: IBCモジュール・LCP・TOKI Liquidityのテストネット開始、Quantstampによる監査完了
Q4: IBCモジュール、LCP、TOKI Liquidityのテストネット完了、その後、メインネット開始
2024年
Q1: Cosmos、Avaxなどのメインネット開始
Q2: 日本市場向けのステーブルコインの開始
Q2以降: ネットワークの拡大とDappsとの協力
今後の展望
ブロックチェーンの断片化されたエコシステムは、国や地域ごとの貿易が今ほど活発ではなく、渡航や物の流通が困難だった時代を思い起こさせるものです。その後、飛行機や新幹線が普及することで人や物の移動が容易になり、各国や地域同士の交流が増大することで経済も大きく拡大しました。
TOKIが実現するクロスチェーンによるセキュアで円滑なブロックチェーン間通信は、飛行機や新幹線をまさにブロックチェーンの世界に導入するようなもので、これまでユーザーにとって不便だった世界をより安全に、便利にするために必要不可欠な基盤になると考えています。
これまでユーザを困らせていたブリッジの不便さから解放され、TOKIを活用してEthereum上の通貨で別のチェーン上のNFTを購入したり、別のチェーンのDefiを利用してみたりと、今後訪れるであろうブロックチェーン経済圏の更なる発展が今から楽しみです。
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参考文献
https://tokifinance.notion.site/
https://www.neweconomy.jp/posts/249295