生成AIが医療文書『退院時サマリー』を自動作成 FIXERと藤田学園が共同開発

2025年5月27日、クラウド開発を手がけるFIXERは、藤田学園と共同で、生成AIによる「退院時サマリー」作成支援システムを開発したことを発表した。全国の大学病院で初の本格導入となる。
藤田医科大学病院、生成AIで退院時サマリー作成を効率化
FIXERと藤田学園は、生成AIを活用した退院時サマリー作成支援システムを共同開発し、藤田医科大学病院での運用を開始した。
システムは2025年2月から6診療科で先行導入されており、わずか1か月後には入院対応可能な31診療科すべてに展開された。
退院時サマリーとは、退院患者の診療情報を次の医療機関と共有するための重要文書である。だが、従来は情報の収集と要約に手間がかかり、作成者ごとの質のばらつきも課題とされてきた。
今回のシステムでは、電子カルテ上のボタンをクリックするだけで、生成AIが診療記録から必要情報を自動抽出する。
数秒で下書きが生成され、医師はそれを確認・修正した上でワンクリックで登録できる。多言語対応もされているため、外国人患者との情報共有にも有効だ。
1件あたり10〜15分を要していた作業が数クリックで完結するこの仕組みにより、業務の省力化と文書の均質化が同時に実現されている。
導入3か月で1000時間削減 医療現場のDXが加速
システム導入後、実際に利用した医師170名を対象に行われたアンケートでは、92%が「業務改善につながった」と回答。81%が「満足している」と評価しており、導入から3か月間で累計1000時間以上の業務短縮が確認された。
こうした実績を受け、藤田学園とFIXERは新会社「メディカルAIソリューションズ」を設立。2025年5月から事業を本格始動し、全国の医療機関への展開を視野に入れている。
新会社では、藤田学園が持つ医療DXの知見と、FIXERのクラウドおよび生成AI技術「GaiXer(ガイザー)」の開発力を融合させる。
今後は退院時サマリーだけでなく、看護サマリーや診断書といった他の医療文書にも対応を広げる予定である。
AIによる文書生成には、情報の正確性や責任の所在といった倫理的課題も残ると思われる。だが、医師による最終確認を前提としたシステム設計により、安全性と効率性の両立が実現されつつあることは間違いないだろう。
医療現場の深刻な人手不足と長時間労働が続く中、生成AIによる業務支援は、単なる効率化を超えて、医療の質そのものを底上げする可能性を秘めているといえる。