「Grok」に記憶機能が追加 個別最適な応答生成で対話AIの進化加速へ

米xAIは2025年4月16日(現地時間)、チャットAI「Grok」に会話の記憶機能を追加したと発表した。
過去のやり取りをもとにユーザーごとに最適化された回答を生成できる仕様で、今後X(旧Twitter)上にも順次展開される予定である。
本アイコンで記憶内容を可視化、対話AIのパーソナライズが進化
xAIが開発するチャットAI「Grok」に、新たに記憶機能が搭載された。
これにより、Grokは過去のユーザーとのやり取りを保存し、それを基にした回答を生成できるようになった。
記憶内容はユーザーが直接確認することが可能であり、生成された回答の下部に表示される本の形をしたアイコンをタップすると、「Referenced Chats」として参照元のやり取りが表示される仕組みだ。
これにより、ユーザーはなぜその回答が生成されたのかを可視化し、AIの振る舞いに対する理解を深めやすくなる。
一方で、ユーザーの情報が半永久的に保持されることへの懸念にも配慮し、「Forget」ボタンによる記憶の削除機能も用意されている。
このボタンを押すことで、特定の会話履歴をGrokから消去することが可能になる。
情報の蓄積と制御をユーザーが主体的に選択できる構成は、プライバシーの観点からも評価できる。
現在、当該機能はβ版として提供されており、Web版のほか、iOSおよびAndroidのGrokアプリでも利用可能である。
ただし、欧州連合(EU)および英国では本機能は提供対象外とされている。
Xへの拡大展開と正式版移行で、Grokの定着が加速する可能性
Grokの記憶機能は今後、ソーシャルプラットフォーム「X(旧Twitter)」にも順次展開される見通しである。
xAIは、同社がElon Musk氏率いるX社と連携していることを背景に、AI機能のX本体への統合を加速させている。
すでにWeb・モバイルアプリで機能提供が進む中、今後XのタイムラインやDM機能との統合が進めば、より直感的かつ継続的にGrokを活用するユーザーが増加する可能性が高い。
また、現在はβ版としての提供にとどまっているが、ユーザーからのフィードバックや利用データの蓄積により、将来的な正式版移行が視野に入るだろう。
AIが文脈を理解したうえで返答を返す仕組みは、カスタマーサポートやコンテンツ生成支援、さらにはマーケティング支援など多分野への応用も期待されている。
ただし、地域規制の問題や記憶精度に対する不透明さなど、今後解決すべき課題も存在する。
Grokが他の生成AIと一線を画す存在として定着するには、ユーザーにとって「記憶される」ことのメリットとリスクを的確に提示し、信頼を獲得していく戦略が求められるだろう。