フィデリティが独自ステーブルコイン開発 デジタル資産戦略の要に

2025年3月26日、米国の大手資産運用会社フィデリティ・インベストメンツ(Fidelity Investments)が、独自ステーブルコインの開発を最終段階に進めているとフィナンシャル・タイムズが報じた。
米ドルに連動するこのデジタル通貨は、マネーマーケットファンド(MMF)における現金の代替手段としての利用が見込まれており、今後のデジタル資産市場に大きな影響を与える可能性がある。
ブロックチェーン活用による資産運用の革新 ステーブルコイン導入の狙いとは
フィデリティは、約6兆ドルの資産を運用する世界有数の金融機関であり、これまでもデジタル資産領域への進出に積極的な姿勢を見せてきた。その戦略の中核に据えられているのが、ブロックチェーン技術の本格活用である。
今回のステーブルコイン開発もその延長線上に位置づけられ、主にトークン化された米国財務省証券市場への参入を視野に入れている。
開発中のステーブルコインは米ドルに価値を連動させることで、価格変動を抑えた安定的なデジタルキャッシュとして機能することを想定している。
特に注目すべきは、このコインが同社のマネーマーケットファンドで現金の代替として利用される可能性がある点だ。
このファンドは機関投資家やヘッジファンド向けに米国債券や短期金融資産を運用するもので、そこにステーブルコインを組み込むことでブロックチェーンベースの効率的な資金移動を可能にする狙いがある。
この取り組みにより、フィデリティは伝統的金融とデジタル資産の橋渡しを目指す立場を強めると見られる。金融商品のトークン化は市場の透明性や即時決済を促進する要因ともなり、今後の標準となる可能性もある。
今後の展望
ステーブルコイン市場は既にテザー(USDT)やUSDコイン(USDC)といったプレイヤーが一定のシェアを獲得している。これらは特に暗号資産トレーダーの間で法定通貨の価値を保ちつつ暗号資産取引所間の資金移動を容易にする手段として広く活用されている。
そうした市場にフィデリティが参入することで、競争の激化は避けられないと考えられる。
他方で、米国の規制環境は流動的だ。トランプ政権下では暗号資産に対する一定の規制緩和が進められてきたが、依然として法的枠組みは明確とは言いがたい。
こうした中でのフィデリティの動きは、規制当局との協調のもとで慎重かつ戦略的に進められていると見られる。
現在、米政府はステーブルコインを含む暗号資産への監視体制を強化しようとする一方で、金融イノベーションの妨げにならないよう配慮する姿勢も示している。
こうした状況下、フィデリティは単なる新規参入ではなく、既存金融とデジタル資産の調和を図ることで差別化を図っていると捉えられる。
将来的には同社のステーブルコインがB2Bの決済インフラや分散型金融(DeFi)との統合など、多様な用途に拡張される可能性も指摘されている。
既に多くの金融機関がこの分野に資源を投下する中、フィデリティがどのような形で競争優位性を確保するかが注目される。