Fat Protocol Poor Applicationを解説、web3の基本思想を学ぶ
本記事では、web3におけるプロダクトの基本思想を解説します。web3領域への参入を検討しようとしている事業者の方にとっては絶対に押さえておかなければいけない知識ですので、ぜひ最後までご覧ください。
Fat Protocol Poor Application とは?
「Fat Protocol Poor Application(富むプロトコル、貧するアプリケーション)」と呼ばれるこの言葉は、web3領域におけるプロダクトの基本思想を表す表現です。ユニオンスクエアベンチャーズのアナリストとして活躍するJoel Monegro氏が2016年にブログで提唱し、以降はweb3を表現する単語として数多くの場面で語られてきました。(元ブログはこちら)
図にするとこちらになります。
要するに、今までのWeb2.0の世界とブロックチェーンを基盤とするweb3の世界では、プロダクトの構造が大きく異なるということを示しています。
Web2.0(The Web)では、「winner take all」という言葉もあるように、GAFAMを筆頭としたプラットフォーマーが強力な力を持ちました。世界の広告市場の大半は、Google、Facebook、Amazonが牛耳っています。No.1の勝者となったプラットフォーマーが他のプラットフォーマーからのシェアを奪い、圧倒的な収益と影響力を持ち、君臨します。
それが現代では当たり前のあり方でした。これが上の図の左側が示す「Application Layer」が強かった時代です。
現代を生きる我々におって、この図は当たり前すぎて、ここからの変化を想像することは難しいかもしれません。しかし、web3の時代はこのあり方が大きく変化します。だからこそ、GAFAMによる一強の時代が終わりを迎え、より分散化したサービスが乱立していくと言われているわけです。
そして、この思想は「web3とは?」を理解するために参考になる部分が大きいと思います。
Fat Protocol(プロトコルが優勢)になるweb3の世界
ちなみに、プロトコルとは”共通規格”のことを意味します。Web2.0で言えば、httpなどがそうです。世界中のHPがhttpと言うプロトコル(共通規格)を利用していることで、どのブラウザからでもリンクさえ踏めばサイトにアクセスできます。
しかし、これだけ全員に利用されているにも関わらず、httpの考案者は有名ではなく、やはりアプリケーションレイヤーのGAFAMの方が有名ですよね。
web3では、このプロトコルレイヤーが優勢になります。より具体的に言えば、web3の世界におけるプロトコルは主に、ビットコインやイーサリアムのような「チェーン」のことを指します。
例えば、世界最大のNFTマーケットプレイスであり、時価総額1兆円を超えるデカコーン企業「OpenSea」も、イーサリアムの上に構築されています。(最近はマルチチェーン対応してますが、基本的にNFT規格自体がイーサリアムを基盤としてスタートしています)
つまり、ビットコインやイーサリアム、ソラナやアバランチなどのプロトコル(チェーン)が存在し、その上にアプリケーションが存在するので、アプリケーションがいくら盛り上がっても、プロトコルレイヤーを超えることは論理的にあり得ません。
その理由は大きく2つあります。
- 共有データ層の存在
- 独自トークンのフィードバックループ
1つずつ解説します。
共有データ層の存在
簡単に言えば、ブロックチェーン上でサービスを作る以上、自社サービスだけで顧客データを囲い込むことはできないと言う話です。
全てのデータに透明性が存在し、プラットフォーマー側ではなくユーザー側にデータの所有権が存在するようになる以上、プラットフォーマーが独占してデータを握ることで優位性を発揮することはできなくなります。
基本的に、顧客の利用データはすべてブロックチェーン上に共有され、その上で各アプリケーションを利用するようになるため、アプリケーションの力は落ちていきます。
独自トークンのフィードバックループ
基本的にプロトコルレイヤーがそれぞれ独自トークンを発行しています。イーサリアムならイーサ、SolanaもSolanaトークンを発行しています。
下記の図はそのトークンのフィードバックループを示した図です。
- トークンローンチ(左下)
- トークン価格の高騰
- 起業家や開発者の注目を集める
- プロトコル上に多数のアプリケーションができる
- さらにトークン価格の高騰
- さらに起業家や開発者の注目を集める
- さらにプロトコル上に多数のアプリケーションができる
これを繰り返すことで、プロトコルが独自トークンを活用しながら成長していきます。
そして、プロトコル上にアプリケーションを作るすべての起業家や開発者はそのプロトコルの独自トークンを保有するため、トークン価格を上げるようなインセンティブが働きます。
以上、2つの理由から、アプリケーションがプロトコルを超えることは論理上起こらず、アプリケーションが充実すればするほど、プロトコルレイヤーが成長していくため、「富むプロトコル、貧するアプリケーション」と言われるわけです。
Fat Protocolからweb3におけるビジネス設計の思想解説
以上、web3領域でプロダクトを開発する際に必ず必要となる基本思想について解説しました。
例えば、以前解説したOasysもOasys上にGameFiができればできるほど、独自トークンOASの価格が向上、安定し、OasysチェーンでGameFiを作るインセンティブが高まります。よって、さらなるゲームが生まれ、Oasysチェーン自体の価値が向上していきます。
他にも、UnUniFiもプロトコルレイヤーのサービスです。
では、プロトコルレイヤーを目指すべきなのかというと、そうとは言えません。なぜなら、基本的にweb3においてプロトコルレイヤーはDAO化してくことを目標においており、全員が利用できる共通財であることが求められるからです。
つまり、プロトコルレイヤーが分厚くなる構造ですが、そこで誰かが利益を独占する構造にはならず、水道や電気のようなインフラになっていくと言うことです。事実、ビットコインもイーサリアムも分散化しており、誰かがその富を独占するようにはなっていません。
大切なのは、この構造を踏まえた上で、どのプロトコルを利用してアプリケーションを構築していくのか、です。
すでに強固なプロトコルもあれば、まだスタートアップで出てきたばかりのプロトコルも存在します。そして、それぞれにメリットとデメリットが存在し、自社アプリケーションに最適なプロトコルレイヤーがきっと存在するはずです。
その前提を理解した上で参入していくことが求められます。
とはいえ、最初からそこをすべて理解することは難しいと思うので、まずはこの思想を理解するところから始めてみるのはいかがでしょうか。その上で、今後ニュースを見たときにプロトコルレイヤーの話か、アプリケーションレイヤーの話かを分けて考えてみることで、よりニュースが面白く感じると思います。
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