EU、AI規制法の一部適用開始　人権か技術革新か

EUのAI規制法の一部が2025年2月2日から適用開始となった。
世界初の包括的なAI規制法として注目を集めるこの法律は、人権侵害につながるAIの使用を禁止し、AIの安全性と信頼性を確保することを目指している。段階的に施行される本法は、企業に対して早急な対応を求めるものである。

段階的な施行と主要な規制内容

欧州連合（EU）が世界に先駆けて制定したAI規制法の一部が、2025年2月2日から適用開始された。

この法律は、急速に発展するAI技術がもたらす潜在的なリスクに対処するため、AIの開発と利用に関する包括的な規制を定めたものだ。

本法の特徴として、AIシステムを4つのリスクカテゴリーに分類し、それぞれに応じた規制を設けている点が挙げられる。

最も厳しい規制の対象となる「受け入れがたいリスク」カテゴリーに分類されるAIシステムは、その使用が全面的に禁止される。具体的には、個人の行動や特性に基づく信用評価（ソーシャルスコアリング）や、未成年者を危険な行動に導く音声ガイド付きおもちゃなどが該当する。

また、「高リスク」カテゴリーに分類されるAIシステムには、厳格な要件が課される。これには、適合性評価、透明性の確保、市販後の監視などが含まれる。

一方、「限定的リスク」および「最小リスク」カテゴリーのAIシステムには、比較的軽微な規制が適用される。

本法の施行は段階的に行われ、2025年2月2日の一部適用開始を皮切りに、2026年8月までに大部分の規則が施行される予定だ。

違反企業には最大で3,500万ユーロまたは全世界年間売上高の7%のいずれか高い方の罰金が科される可能性があり、企業にとっては早急な対応が求められている。

規制法の影響と課題

EUでビジネスを展開する企業は、自社のAIシステムがどのカテゴリーに分類されるかを特定し、それに応じた対策を講じる必要がある。

また、AIガバナンスの枠組みの構築やAI運用の透明性確保など、包括的なコンプライアンス体制の整備が急務となっている。

本法の施行により、AIの安全性と信頼性が向上し、人権侵害のリスクが軽減されることが期待される。一方で、厳格な規制がAI開発の障壁となる可能性も指摘されており、イノベーションと規制のバランスをどう取るかが今後の課題となるだろう。

EUのAI規制法は、AIの急速な普及に伴う課題に対する世界初の包括的な法的対応として注目を集めている。今後、他の国や地域でも同様の規制が検討される可能性も考えられ、グローバルなAI規制の動向に大きな影響を与えると予想される。