スタンダード・チャータードやドイツ銀行、米国仮想通貨事業参入を計画

2025年4月21日、ドイツ銀行やスタンダード・チャータード銀行などの大手金融機関が、米国での仮想通貨事業への参入を検討しているとウォールストリートジャーナルが報じた。
これはトランプ政権下で再び強まる規制緩和の動きを背景とするもので、米国における暗号資産市場の地殻変動を示す動きといえる。
トランプ政権下で進む規制緩和と金融大手の動向
ドイツ銀行とスタンダード・チャータード銀行は、いずれも仮想通貨分野で国際的な取り組みを強化している金融機関である。
今回、両行が米国での仮想通貨事業に関心を示しているのは、トランプ政権下で進む金融規制の緩和が直接の契機になっているとみられている。
トランプ前政権は仮想通貨を取り巻く制度の壁を取り払う姿勢を見せている。
米通貨監督庁(OCC)は3月、銀行による仮想通貨の保管やステーブルコイン関連事業の実施を認める方針を再確認した。
この動きは、銀行が仮想通貨領域に再参入する環境を整備するものと受け止められている。
ドイツ銀行は既にスイスのTaurusと提携し、仮想通貨のカストディ(保管)事業をはじめ、現実資産(RWA)のトークン化を進めている。
スタンダード・チャータード銀行も、アラブ首長国連邦(UAE)にて仮想通貨のストディ事業を展開し、地域における先進事例を構築してきた。
両行の動きは、既存の枠組みを活用しつつ米国進出を視野に入れた布石と見られている。
バイデン政権下では仮想通貨業界への警戒感が強く、銀行による暗号資産関連サービスの提供には制限が課されてきた。
こうした規制の揺り戻しが現在進行中であり、SEC(米証券取引委員会)がバランスシート上での仮想通貨の扱いについて緩和姿勢を示すなど、政策転換が市場に安心感をもたらしつつある。
国際金融機関の参入で進む米仮想通貨市場の制度化と再活性化
今回の報道が示すのは、米国の仮想通貨市場が再び国際金融機関の注目を集めているという潮流である。
今後、ドイツ銀行やスタンダード・チャータードのような欧州系大手が本格的に米市場に参入すれば、それに呼応する形で他の金融機関やテック企業の動きも活発化する可能性が高い。
特に、OCCやSECの動向次第では、銀行による仮想通貨サービスが制度上容認される領域が拡大する見通しだ。
仮にバランスシート上での取り扱いや、ステーブルコイン関連事業が法的に明確化されれば、業界全体にとっての「制度的インフラ」が整うことになる。
その一方で、トランプ政権の規制緩和路線が市場の短期的期待を押し上げる半面、長期的なガバナンスや消費者保護の枠組みが置き去りにされるリスクも孕んでいるだろう。
今後の展開は、金融当局がどこまで技術革新とリスク抑制のバランスを取れるかにかかっている。
最終的に、米国における仮想通貨事業の本格化は、国内政策の一貫性と国際競争力の双方を試す試金石となるだろう。
国際的な金融機関がその舵取り役を担うことで、仮想通貨市場はより制度化された次のフェーズに進む可能性がある。