デルがブランド刷新 AIコンサルで「選ばれる理由」を構築

2025年3月31日、デル・テクノロジーズは東京で記者会見を開き、日本市場向けのブランド刷新と新製品、さらにはAIコンサルティングサービスの展開を発表した。
法人向け「Dell Pro」シリーズの本格展開と周辺機器の強化、そしてコンサルティングサービスの拡充を軸に、AI時代を見据えた総合的なソリューションを提案している。
新製品が示すAI PCという方向性
デルは今回のブランド刷新で、AI PCの需要が世界的に拡大する中、法人市場における「セキュリティ」と「効率性」を両立させる戦略を打ち出している。
今回の発表では、Dell Pro、Dell Pro Plus、Dell Pro Maxの3シリーズが新たに導入され、日本国内におけるDell Proのフルラインナップが完成した。
各モデルにはNPU(※)を搭載し、AI関連の処理を迅速に行えるだけではなく、クラウドに依存せずローカルでAI処理を行えることから、情報漏洩リスクを低減できる強みがある。
製品設計においても「現場で使いやすい法人機器」という軸が貫かれている。
CPUの選択肢はIntel、AMD、Qualcommと多様であり、ユーザーフレンドリーな構成だ。
加えて、修理性と保守性を高めるためにUSB Type-Cのネジ止め構造や、I/Oポートの独立パーツ化が導入されている。
静音設計にも手が入れられており、筐体の再設計によりタワー型では最大71%、スリム型では最大57%の静音性向上を実現。
オフィス環境での快適性向上にもつながる仕様である。
今回の刷新は、AI技術の進化に対応し、日本企業の現場ニーズを丹念に拾い上げた結果だと言える。
※NPU(Neural Processing Unit):
AI処理に特化した専用チップであり、従来のCPUやGPUよりも効率的かつ高速に機械学習や推論処理を行える。主にAI PCやスマートフォンなどで活用されている。
今後の展望予測、AIコンサルティングサービスが広がる可能性
今回の発表では、AI活用を前提としたコンサルティングサービスの拡充が特に目を引く戦略となっている。
「Microsoft 365 Copilot(※)アドバイザリーサービス」は、企業の生産性向上を支援する内容で、約1カ月・150万円から導入可能だ。
「ワークフォースペルソナ アセスメントサービス」では、従業員の業務特性に応じて最適なPC環境を設計する提案がなされ、約2カ月・500万円から提供されている。
デルはハード、ソフト面でAI対応を推進しているだけでなく、コンサルティングなどのサービス面でもAI活用を積極的に支援する方向性を打ち出している。
これらの施策が奏功すれば、デルは単なるPCベンダーにとどまらず、AI時代におけるITパートナーとしての地位を固めることになるだろう。
ただ、課題も見逃せない。
AIコンサルティングサービスの価格設定が中小企業にとっては高額であり、導入のハードルはいまだ高い。
大企業を主要ターゲットとした価格戦略だとすれば、市場の裾野を広げるには別のアプローチが必要になってくるだろう。
とはいえ、今回の刷新は、AI PC市場における「セキュリティと効率性の両立」というニーズを的確に捉えた動きと評価できる。今後の鍵は、ハード・ソフト・コンサルの連携をどこまで実効性ある形で統合できるかにかかっている。
※Microsoft 365 Copilot:
Microsoftの提供するAIアシスタント機能であり、WordやExcelなどのOffice製品において自然言語での操作や自動化を可能にする機能。企業の業務効率向上が期待されている。