異なるブロックチェーンを接続!株式会社Datachainが目指す相互運用性の向上
株式会社Datachain(以下、Datachain)は、世界規模で急成長するクロスボーダー送金市場において、低コストかつ高速で365日対応の送金基盤の構築を目指しており、その一環として安全で効率的な相互運用システムを提供しています。
法規制への対応や既存の銀行システムとの接続を重視し、SwiftのAPIフレームワークを基盤に利用するプロジェクトなどは、金融業界全体にとっても画期的な試みとして注目を集めているため、これらの取り組みを踏まえDatachainのプロジェクトの詳細を考察します。
ブロックチェーンの相互運用性を実現する
Datachainは、2018年に創業して以来、研究開発(R&D)に取り組み、次世代の国際送金を実現するためにステーブルコインを活用した新たなクロスボーダー送金基盤の構築に注力しています。また、異なるブロックチェーン同士を連携させるクロスチェーンインフラの開発も推進し、ブロックチェーンエコシステムの相互運用性をさらに向上させるための取り組みを行なっています。
主な事業領域は以下3つです。
Cross-border Stablecoin Payment
ステーブルコインを活用することで、従来よりも「早い」「安い」「便利な」次世代型の国際送金を実現することを目指しています。メガバンク3社と共同で設立したデジタル資産プラットフォーム「Progmat」をはじめ、国内外の金融機関とも連携しながら、2025年の商用化を目標に技術開発を行なっています。
Cross-chain Platform (TOKI)
現在、多様なブロックチェーンが存在していますが、それらのネットワーク同士を効果的に「接続」するための仕組みはまだ十分に整備されていません。この課題に対応するため、信用を最小限に抑えながらも高い安全性を確保したクロスチェーンブリッジの提供を行なっています。このサービスによって、異なるブロックチェーン間でのトークン移転が可能になり、ブロックチェーンの相互運用性を大きく向上させることを目指しています。
R&D
ブロックチェーン技術を基盤とするサービスを支えるための研究開発(R&D)に取り組んでおり、IBC(Inter-Blockchain Communication)というブロックチェーン間通信のプロトコルへ継続的に貢献しています。また、ゼロ知識証明を活用したデータ検証や、堅牢な鍵管理技術の開発にも注力し、エコシステム全体の課題を解決することを目指しており、オープンソースソフトウェア(OSS)としてコミュニティへの公開を行なっています。
代表的な3つのサービス
Datachainの代表的なサービスについても3つご紹介します。
YUI
Hyperledger LabsプロジェクトであるYUIは、異なるブロックチェーン間でIBCを活用した相互運用性を実現することを目指しています。対象となるブロックチェーンには、Ethereum、BNB Chain、Hyperledger Fabric、Hyperledger Besu、Quorum、Cordaなどが含まれます。
IBCは、Cosmos SDKで構築されたブロックチェーンに限定されるものではなく、さまざまなブロックチェーンに適用できる非依存型の相互運用プロトコルです。このプロトコルは、第三者への信頼を最小限に抑えつつ異なるブロックチェーンを安全に接続できる点が特徴で、世界で広く採用されています。
YUIはIBCを多様なブロックチェーンに対応させるためのモジュールやフレームワークを開発し、IBCエコシステムの拡大を支援しており、Datachainは、Solidityを用いたIBC実装であるibc-solidityを含む、IBCの主要な開発に携わっています。
各ブロックチェーンにはIBCモジュールが構築され、そのモジュール内には接続先のブロックチェーンに対応したLight Clientが組み込まれています。異なるブロックチェーン同士はRelayerを通じて相互に検証を行い、安全な通信を確保します。
LCP
LCPは、TEE(Trusted Execution Environment)で動作するライトクライアント検証用のプロキシミドルウェアです。IBCを活用して、あらゆるブロックチェーン間で相互運用性を実現します。
LCPはIntel SGXを使用するTEEを活用し、安全性を損なうことなく、さまざまなブロックチェーンでのIBC利用において問題となる「拡張性」と「ガス効率」を改善します。一般的なブロックチェーンの相互運用システムは、つなげるブロックチェーン以外にも新たな第三者の信頼が求められ、これが原因で多くのハッキング被害が発生しているのが現状です。
IBCは、異なるブロックチェーン間で最小限の信頼による通信を可能にしますが、Ethereumなど複数のブロックチェーンでIBCを利用するためには「高い検証コスト」と「低い拡張性」という2つの課題を解決する必要があります。LCPは、TEEを利用してこれらの課題を解消し、検証を直接行うのではなく、プロキシを介して「ライトクライアント検証」を実行することで、対象ブロックチェーンの有効性を低コストで確認できるProofを生成します。
接続先のブロックチェーンは、このProofを通じて相手側ブロックチェーンの検証を低コストで実施できるため、インターオペラビリティが効率的に実現します。Proofの検証が可能であれば相手ブロックチェーンの種類に左右されないため、これによって拡張性の課題もクリアすることが可能になります。
現在、ZKP(Zero-Knowledge Proof、ゼロ知識証明)を組み合わせ、さらなるセキュリティ強化を図るインターオペラビリティ技術の開発も進められています。
Cross Framework
Cross Frameworkは、異なるブロックチェーン間でスマートコントラクトを実行可能にするためのフレームワークです。開発者が通常通りスマートコントラクトを書くことで、複数のブロックチェーンにまたがるスマートコントラクトの実行を実現するために設計されています。1つのブロックチェーンから他のブロックチェーン上でもスマートコントラクトを動作させることが可能になります。
さらに、Cross Frameworkは複数のブロックチェーンでの取引を同時に実行できる機能を備えており、DVP(Delivery Versus Payment)決済やPVP(Payment Versus Payment)決済といったユースケースにも活用されています。
代表的な2つのプロジェクト
Datachainの代表的なプロジェクトについても2つご紹介します。
Cross-border Stablecoin Remittance with Progmat and Swift
本プロジェクトは、ステーブルコイン(以下SC)を用いたクロスボーダー送金基盤の構築を目指す共同プロジェクト「Project Pax」です。
クロスボーダー送金市場は2022年には182兆ドル(約28,000兆円)に達しましたが、この市場では「送金コスト」「着金のスピード」「アクセス」「透明性」など、G20でも解決が求められている重要課題が山積している状態です。このような状況を背景に、Progmat, Inc.(以下、Progmat)とDatachainは、SCを活用することで、低コストで迅速かつ24時間365日利用可能なクロスボーダー送金の実現を目指しています。
「Project Pax」では、クロスボーダー送金基盤としてAML/CFTへの対応や各種規制への準拠、運用体制の整備に加え、企業がウォレットを利用する際のハードルを考慮した仕組みとして、Swiftの既存APIフレームワークを活用し、銀行を経由してSCの送金を可能にします。
実証実験は速やかにプロトタイプを使用して開始する予定であり、既に国内外の主要な金融機関が参加を表明しています。さらに今後も連携国・金融機関を拡大し(順次関係する金融機関名を公表予定)、2025年の商用化を目指していくとのことです。
Cross-chain Bridge with TOKI
TOKIは、パブリックブロックチェーン同士でクロスチェーン取引を実現する「クロスチェーンブリッジ」を目指し、このブリッジはDatachainが開発したLCPを活用し、優れた安全性と拡張性を備えたブロックチェーン間通信技術を基盤としています。
また、高効率な流動性を確保する仕組みにも強みがあり、次世代のクロスチェーン取引の可能性を広げており、三菱UFJ信託銀行やOasysなどとも提携を行なっています。
Swiftと連携したステーブルコイン 国際送金システムに関する特許出願
2024年10月、DatachainとProgmatは、Swiftシステムと連携したステーブルコインによる国際送金システムに関する特許出願を完了したことを発表しました。
両社は、2024年9月5日に「Project Pax 」と名付けたクロスボーダー・ステーブルコイン送金基盤構築プロジェクトを公表しており、今回の特許出願はそのプロジェクトで開発が進められているシステムに関連するものです。今後、国際的な特許出願も視野に入れ、主要国での権利取得を目指し、グローバル市場におけるステーブルコイン国際送金システムのシェア拡大を図っていくとのことです。
ステーブルコイン国際送金システムの特許出願について
DatachainとProgmatは、クロスボーダー・ステーブルコイン送金基盤「Project Pax」の構築を進めており、2025年の商用化を目標にプロジェクトを推進中です。このプロジェクトは、2023年時点で約190兆ドル(約28,500兆円)規模に達したクロスボーダー送金市場において、ステーブルコインを活用し、24時間365日稼働可能で、高速かつ低コストでの送金を実現することを目標にしています。
本システムの特徴は、法規制に準拠したProgmatのステーブルコインの活用に加え、AML/CFT(資金洗浄およびテロ資金対策)への対応、また企業ウォレットの利用促進を考慮し、Swiftの既存APIフレームワークを用いて銀行経由でステーブルコイン送金を実現できる点にあります。
今回出願された特許は、「Project Pax」において開発が進められている、Swiftシステムと連携したステーブルコインによる国際送金システムに関するものです。
特許出願の意図と今後の展開
本特許出願において、DatachainとProgmatが開発中のSwiftシステムと連携したステーブルコインを活用する国際送金システムを、グローバル市場で広めることが目的です。成長を続けるクロスボーダー送金市場において、ステーブルコインに関する法整備も各国で進展している中、同様のスキームの登場も見込まれています。
この状況をふまえ、日本国内での出願を皮切りに、今後は国際出願および主要国における特許出願も積極的に進めていく予定とのことです。
今後の展望
Datachainは、ステーブルコインを活用した次世代の国際送金基盤「Project Pax」の実現や、ブロックチェーン相互運用性を支える「TOKI」、さらにはIBCとセキュリティ技術を用いた安全なブロックチェーン接続の進化に注力しています。
以下では、これらの特徴をもとに、Datachainが提供するソリューションがブロックチェーンの未来にどのような影響を与えるかについて考察します。
ステーブルコインによる低コスト・高速な国際送金基盤の実現
今後、DatachainとProgmatが提案するステーブルコインを用いた国際送金基盤「Project Pax」は、グローバル送金市場における革新的なソリューションとして成長が期待されています。
従来、国際送金はコストが高く、送金の反映にも時間がかかることが多いですが、SCを活用することでこの課題を克服し、低コストかつリアルタイム送金を可能にするインフラが提供されます。特に、国際的に広がるSC規制への対応やAML/CFT(資金洗浄防止・テロ資金供与対策)への適合が進められており、これにより金融機関におけるSCの導入が加速する見通しです。
DatachainとProgmatの協力により構築されるこの新たな送金基盤は、より迅速で柔軟な金融取引の基盤となり、ユーザーや企業が直面する多くの送金関連コストの削減が可能となるでしょう。
クロスチェーンインフラを支えるTOKIによる広範なブロックチェーン接続
Datachainが開発するクロスチェーンプラットフォーム「TOKI」は、異なるブロックチェーンを相互に接続し、トークンの移転や取引を可能にする画期的なソリューションとして期待されています。
現在、多様なブロックチェーンが存在し、それぞれのネットワークで独立したエコシステムを構築していますが、TOKIはこの分断を解消し、ブロックチェーン間でのシームレスな資産移動を実現します。
Datachainは、トークン移転における信用リスクを最小限に抑えつつ、安全性と流動性を確保するための設計を行っており、この仕組みによりトークン交換やDVP(Delivery Versus Payment)決済、PVP(Payment Versus Payment)決済など、多様なユースケースでの活用が想定されています。異なるネットワーク間での資産運用をより効率的にすることで、ブロックチェーンエコシステム全体の相互運用性がさらに高まると考えられます。
関連リンク
▼株式会社Datachain 公式HP
https://www.datachain.jp/ja/company
▼株式会社Datachain プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/55051
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