Web3学習コラム:DAO基礎
近年、コミュニティの中で〇〇DAOと名乗るところも増えてきており、新しい組織づくりが広まっているかと思いきや、実態はWeb3をアピールするだけのブランディングである場合が多く、DAOと呼べる組織はほとんどありません。
本記事では、DAOとは何なのか?から始まり、DAOによって実現できる未来、DAOに対する誤解について解説します。
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DAOとは
DAOとはDecentralized Autonomous Organizationの略で自立分散型非中央集権組織のことです。
簡単に言うと、社長や経営者がおらずメンバー全員で意思決定を行うことで、運営・管理を行っていく組織です。
DAOの定義については色々な意見がありますが、bitFlyer社が分かりやすいDAOの定義を作成していたので、参考にしましょう。
引用:https://blockchain.bitflyer.com/pdf/Web3Research2023.pdf
上図のとおり、DAOは運用・システム自動化と統制手段の2種類の観点から、レベルを区分できます。
完全なるDAOとは、運用・システムが完全に自動化されており、なおかつ統制手段がトークンorコミュニティであるものと整理できます。
ビットコインが完全なるDAOと呼ばれるのはこのためです。
逆を言うと、運用・システムも自動化されておらず、統制手段が法人であるものはDAOではありません。DAOの判断をする時は上図を参考にしましょう。
代表例:ビットコイン、イーサリアム
DAOで実現できる未来
- 腐敗や政治的干渉に強い組織づくり
- グローバルな組織づくり
- 不正行為を行う可能性の低い組織づくり
- 大企業や国家による検閲耐性のある組織づくり
詳しく解説します。
腐敗や政治的干渉に強い組織づくり
従来の会社組織では、権力を持っている派閥が政治力によって物事を決定する場面も見られます。
また投票により決定する場合もあるかもしれませんが、集計は内部で行われ投票結果は手動での処理となるため、不正が行われる可能性がありました。
しかしDAOでは物事を決定するときはメンバーによる投票が行われ、その投票結果を元に自動的に実行されるので、政治力に影響されにくい組織を作ることができます。
またそもそもDAOでは従来の会社のような社長をピラミッドのトップに置いた階層的な組織ではなく、メンバー全員フラットな関係であるため、派閥が作られにくいといった特徴もあります。
グローバルな組織づくり
組織を作るときは資金やお金が関わるため、相手との信頼関係が必要不可欠です。
そのためメンバーになってもらうには、その人が信頼できるかどうかを面接等によって判断する必要があります。
しかしDAOでは運営方法がコードで公開されているため、メンバーと信頼関係を作る必要がなく、コードを信頼すれば大丈夫です。
よって今までは信頼関係の構築が難しかったグローバルな人たちも含めた組織づくりが可能となります。
不正行為を行う可能性の低い組織づくり
DAOの資金はグループの承認なしには誰もアクセスできない仕組みになっています。
そのため社長が会社のお金を私用で使ったり、社員が横領したりということはできません。
また資金が何に使われたのかも100%公開されるので、不正行為を低減させることができます。
大企業や国家による検閲耐性のある組織づくり
先ほども説明しましたが、DAOでの物事はメンバーの投票でのみ決定されます。
よって大企業や国家といえど、口出ししてルールを変更させることはできず、ルールを変更させるにはメンバー投票で可決される必要があるため、大企業や国家による介入が難しいと言えます。
DAOに対する誤解
上記ではDAOを活用することによる素晴らしい未来を解説してきましたが、DAOは組織づくりの一種であり、必ずしも会社より優れているわけではありません。
実際にDAOのデメリットとして挙げられるポイントは以下のとおりです。
- ガバナンストークンの集中
- 意思決定が遅い
- 脆弱性やセキュリティに不安がある
- 規制の影響
詳しく解説します。
ガバナンストークンの集中
DAOでは基本的にガバナンストークンの保有者に投票権が与えられます。
メンバーは保有しているガバナンストークン数に応じて投票権が与えられるので、大きな資産を持っている人には大きな影響力が与えられます。
ガバナンストークンを一部のメンバーが大量に保有すると、投票権の分散化が上手くできず、大きな影響力を持っているメンバーが理不尽な提案をした場合も可決されてしまう可能性が高くなります。
意思決定が遅い
上でも説明しましたが、DAOでは意思決定を行う際に必ず投票によって決定します。
仕組み上、投票には時間がかかってしまい迅速な意思決定はできません。
そのため朝令暮改でスピーディーに進めなければならないような仕事には向いていません。
脆弱性やセキュリティに不安がある
DAOの運営は全てスマートコントラクトのコードに依存しています。
スマートコントラクトのコードが完璧で、脆弱性がなければ問題ないですが、もし脆弱性が見つかった場合、悪意のある人から攻撃される可能性があります。
実際にEthereum上で最初に作られたDAOである「The DAO」はスマートコントラクトの脆弱性を攻撃され、52億円も盗まれてしまいました。
またコードの脆弱性を見つけ修正が必要だと分かった場合も、コードの修正にはメンバーによる投票で可決される必要がありるため、迅速に対応することができないのも弱点の一つです。
規制の影響
現時点では法整備が追いついておらず、DAOに関する明確な規制や規則はありません。
しかし、いずれはDAOに対する課税や管理方法について、規制や規則が作られることが予想されます。
そして、その規制や規則がDAOにとって致命的なポイントになってしまう可能性があります。
このように確かに会社よりDAOの方が優れているポイントがあるのは事実ですが、会社の方が優れているポイントもたくさんあります。
全ての組織はDAOを目指すべきだと考えるのではなく、適切な組織のあり方を考える必要があります。
まとめ
本記事では、DAOとは何なのか、DAOによって実現できる未来、DAOに対する誤解について解説しました。
DAOは新しい組織の作り方として注目すべきですが、盲目的にDAOで組織づくりをしようと考えるのは危険であることが理解できたと思います。
次回はDAOの活用事例について解説します。具体例を見ることでより理解が深まると思うので、是非参考にしてください。