大和ハウスグループのコスモスイニシアとUPBONDが資本業務提携 Web3技術で訪日外国人向け旅行体験を革新

2025年3月26日、大和ハウスグループのコスモスイニシアとWeb3ウォレット提供の国内スタートアップ・UPBOND(アップボンド)が資本業務提携を発表した。Web3技術を活用し、訪日外国人向けの旅行体験プラットフォーム開発を目的とした取り組みで、日本市場における新たな観光体験の創出が期待されている。
提携の背景と「Login3.0」による新たなユーザー体験設計
コスモスイニシアは、住まいを提供するレジデンシャル事業や、宿泊事業を行う企業だ。
一方のUPBONDは、Web3時代に対応した分散型IDやウォレット機能を提供するスタートアップで、「Login3.0」と呼ばれる独自のログイン基盤を開発している。
今回の資本業務提携により、両社はそれぞれの強みを活かし、訪日外国人向けの利便性と没入感を兼ね備えたサービス構築を目指す。
この提携の第一歩として、コスモスイニシアのグループ会社・コスモスホテルマネジメントが展開するアパートメントホテル「MIMARU」にて、「Login3.0」を活用した実証実験が行われた。
利用者は、NFT形式の会員証を発行し、パスポート情報の事前登録、さらに手荷物配送サービスを体験。加えて、インセンティブとしてステーブルコインUSDCが付与された。
実証実験は2024年9月から11月に実施され、「MIMARU」宿泊者に対するアンケートや利用データを通じて、従来よりも1.8倍の手荷物配送サービス利用という成果が得られた。
NFT会員証の発行による利便性の向上や、ステーブルコインによるインセンティブ設計が功を奏し、サービス全体のエンゲージメントが高まったと考えられる。
この結果を踏まえ、今後は事前チェックインの機能追加や、旅行体験全体を一貫して設計できるプラットフォームの拡充が計画されている。
実証実験で見えた手応えと、Web3によるインバウンド市場の可能性
コスモスイニシアという大手不動産グループと、Web3スタートアップのUPBONDという異なる領域の融合は、新規性と実行力の両立を可能にする点で意義深い。
すでに実証実験で定量的な成果が得られていることからも、実用性のある技術としてのポテンシャルは十分に示されたと言える。
今後の展望としては、Web3の技術が旅行体験の裏側で自然に機能する「インビジブルUX(ユーザー体験)」の形で浸透していくことが予想される。
また、今回の事例が成功モデルとして評価されれば、他の宿泊施設や自治体との連携も視野に入るだろう。
ただし、技術だけでなく、それを活かす運用設計とユーザー教育が並行して行われなければ、せっかくの仕組みも形骸化する懸念がある。
実証実験の成果をもとに、どこまでスケーラブルな設計を描けるかが鍵となる。
今後は「Web3のための観光」ではなく、「観光のなかにWeb3が自然と溶け込む」フェーズへと移行していく必要があるだろう。