李在明氏が大統領選出馬、初訪問先はAI半導体スタートアップ AI公約の青写真公開も計画

2025年4月13日、韓国の共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)前代表が大統領選挙出馬宣言後、初の公式訪問先としてAI半導体スタートアップ「ピュリオ社AI」への訪問を14日に予定していると明かされた。AI政策を選挙戦の中心に据える姿勢を明確にしている。
AIが国家の未来を左右する 半導体企業訪問に込められた選挙戦略
代表的な韓国のAI企業「ピュリオ社AI」は、NPU(神経処理装置 ※)開発において国内トップの技術力を誇り、米メタ社からの買収提案を拒否した過去を持つことで知られている。
訪問の背景には、グローバル市場におけるAI競争が激化するなか、韓国が技術主導の地位を確立するという強い意志がある。
選挙キャンプのカン・ユジョン報道官は記者団に対して「米国のNVIDAの独占を破る韓国製技術力の現場を訪問する」と発言している。
また、「ピュリオ社を訪問し、AIを今回の大統領選挙の最優先政策話題として提示し、概括的な公約の青写真も公開する計画」だとしている。
李前代表は3月2日、「(韓国に)NVIDIAのような会社が一つできれば、70%は民間が、30%を全国民で共有できれば、税金に頼らずとも成り立つ社会が実現できるのではないだろうか」と発言し論争を呼んだ。
AI分野は「次世代の国富を支える基盤」であり、これを実現するために「AI国富ファンド」(仮称)の設立を構想しているという。
ファンドでは政府と民間の共同出資を通じて、AI分野への積極的な資金投下を図る狙いだ。
このような動きは、米NVIDIAに象徴されるAI半導体市場において、韓国企業が独自のプレゼンスを築くための第一歩といえる。
※NPU(神経処理装置):人間の脳の神経回路を模倣して情報処理を行うAI専用プロセッサ。
今後の展望 韓国AI半導体の未来
AIを軸とする李在明氏の戦略は、今後の政策議論の主要トピックになる可能性が高い。
韓国は既にメモリ半導体では世界的地位を築いており、今後はAI半導体やNPUといった次世代領域での主導権争いが本格化していくと見られる。
ピュリオ社のようなスタートアップに国家的資源が注がれれば、技術革新のスピードは一定程度加速すると考えられる。
ただし、これは民間の自律的な競争を促す制度設計と両立した場合に限られる。公的資金やファンドの設計次第では、政治色の強い「象徴的企業」だけが優遇され、健全なスタートアップ・エコシステムの構築が阻害される恐れもある。
今後、李氏の政策が現実味を帯びるかどうかは、「AI国富ファンド」に関する制度設計の透明性と実行性、そして民間企業がどこまで主体的に動ける環境が確保されるかにかかっているだろう。
AIと経済成長を結びつけるビジョン自体は期待されるが、それを実現するための「開かれた設計」が問われる局面に入っていると言える。