多くのCEOが幹部の「AI理解不足」に不安を抱く現実 ガートナー調査で浮き彫りに

米調査会社ガートナーが2025年5月6日(米国時間)に公表した最新レポートによると、世界のCEOの多くが経営幹部のAI理解不足を懸念していることが明らかになった。AIが企業の成長戦略に不可欠となる中、知識格差がビジネス停滞のリスクを高めている。
経営幹部のAI理解度にCEOが警鐘、テクノロジーギャップが企業の成長を妨げる
ガートナーは5月6日、世界各国のCEOおよび上級経営幹部456名を対象にAIに関する意識調査「Gartner CEO and Senior Business Executive Survey」の結果を発表した。
調査の主眼は、AIのビジネス活用に対する期待と、それを推進する社内体制の現状を把握することにある。
その結果、CEOの44%しかCIO(最高情報責任者)がAIに精通していると評価しておらず、他の経営幹部であるCISO(最高情報セキュリティ責任者)やCDO(最高デジタル責任者)についても同様に、AI理解が不十分であるという声が多数を占めた。
一方で、AIに対する期待は極めて高い。CEOの77%が、AIがビジネスの新時代をもたらすと見なしており、デジタル技術の進展が企業戦略の根幹に関わることを強く認識している。
しかし、実務を担う幹部がテクノロジーの本質を理解していなければ、その導入や活用は空回りし、競争力の低下に直結する可能性がある。
調査では、AI導入の障壁として「熟練人材の不足」や「技術の価値や成果を正確に評価できないこと」が上位に挙げられた。
これは、企業内でAIプロジェクトのROI(投資対効果 ※)を明確に説明・管理する能力が不足していることを意味している。
AIを活かす鍵は「幹部教育」にあり 企業に求められる次の一手
ガートナーのアナリストであるデイヴィッド・ファーロンガー氏は、「経営幹部がAIに対する理解を深めなければ、企業は競争力を維持できなくなる恐れがある」と警告する。AI導入をリードする立場にある幹部自身が、その構造やリスク、活用方法に精通していなければ、単なる技術導入に終わってしまうからだ。
今後重要となるのは、経営層への継続的なAI教育や実践的なトレーニングである。単なる研修にとどまらず、経営判断と直結するビジネスインパクトの理解や、ROIを可視化するための評価指標の策定が求められるだろう。
また、社内のAIリーダー人材を育成するためのロードマップ策定や、外部の専門機関との連携も重要性を増すと予想される。
これにより、企業はAI導入の初期段階にとどまらず、持続的な成果を生み出す「運用フェーズ」へと移行していくことになるはずだ。
AIを軸とした変革の成否は、最終的には人材、すなわち経営幹部の意識と行動にかかっている。経営トップから現場までの全レイヤーが、同じ認識と知識を共有し、変化に適応できる体制を構築することが、生き残りの条件となるのではないだろうか。
※ROI(Return on Investment):投資に対してどれだけの利益を得られたかを示す指標。AI導入では、コスト対効果の見極めが難しく、企業の意思決定を複雑化させる要因となっている。