ブータン、観光業に仮想通貨決済導入 バイナンスペイを世界初 国家実装

2025年5月7日、暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスは、ブータン王国がバイナンスの決済ソリューション「Binance Pay」を国家観光事業に導入したと発表した。
仮想通貨決済の観光産業への国家レベルでの実装は世界初であり、100種類以上の暗号資産による支払いが可能になる。
観光収益強化へ向けた国家戦略 デジタル通貨がブータンを変える理由
ブータンへ訪れる観光客はバイナンスペイを通じて、BNB(バイナンスコイン)やビットコイン(BTC)を含む100種類以上の仮想通貨で、航空券、ホテル、飲食、買い物の支払いが可能になる。
これにより、為替手数料や決済時の煩雑な手続きから解放され、よりスムーズな旅行体験を享受できる環境が整いつつある。
この国家プロジェクトを実現させたのが、ブータン国内に事業ライセンスを持つデジタルバンク「DK Bank」である。
同行はバイナンスと協力し、既に国内の小売店100店舗以上へシステムを導入済みだ。
これにより、観光の恩恵を大手事業者に限らず、零細な商店にまで波及させる金融包摂の動きが進んでいる。
ブータン政府観光局のディレクターは、今回の導入が「単なる決算ソリューションではなく、イノベーション、金融包摂、利便性へのコミットメントだ」とコメントしている。
観光における体験価値と効率性の両立を目指すこの施策は、伝統文化とテクノロジーの融合を図るブータンの象徴的な取り組みと言える。
仮想通貨で切り拓く観光立国の新戦略 ブータン発モデルが示す可能性
今回の「国家単位での観光政策における仮想通貨導入」という前例のない試みは、今後の小国・新興国にとって重要なモデルケースになり得るだろう。
特に自国通貨が不安定で、外貨建て決済が好まれる国々にとっては、仮想通貨による直接決済はレバレッジ効果をもたらす可能性がある。
また、観光分野は現地での消費が主であるため、キャッシュレス化が進みにくかった地域でも今回のようなソリューション導入が突破口になると考えられる。
バイナンスペイのような既存インフラを活用することで、国家が独自に決済システムを構築する負担も軽減される。
ただし、持続可能な成功には安定した価格管理や規制整備、サポート体制の構築が不可欠である。
観光客の信頼を得るためには、「安全に使える」という印象を制度・運用の両面から醸成する必要があると考えられる。
今後、他国がこのモデルを参考に、同様の導入を検討する動きも出てくる可能性もあるだろう。
仮想通貨決済が“観光立国”の新しい戦略ツールとして機能するかどうか、その試金石となるのが、まさにこのブータンの挑戦であるといえる。