ブラジル金融当局、年金基金による仮想通貨投資を全面禁止

ブラジルの国家通貨評議会(CMN)は、2025年3月27日の会議で、国内の主要年金基金である「閉鎖型補完的年金事業体(EFPC)」に対し、ビットコインなど仮想通貨への投資を禁止することを決定した。年金基金の安定性を重視した措置であり、世界的にも注目が集まっている。
年金資産1兆レアルを保護 仮想通貨のリスク回避が目的
ブラジルの国家通貨評議会(CMN)は、国内の主要年金基金による仮想通貨への投資を全面的に禁止する決定を下した。
EFPCは、ブラジルの民間企業や公共機関の従業員向けに運営される私的年金基金であり、加入者の退職後の所得保障を担い、国の社会保障制度を補完する重要な役割を果たしている。
国内には約300のEFPCが存在し、その資産総額は約1兆レアル(約26兆円)に達しているとされる。
今回の決定は財務省が推進する「金融改革アジェンダ」の一環であり、ブラジル証券取引委員会(CVM)が進める新しい投資ファンド規制の枠組みに対応することが主な目的とされているが、仮想通貨への投資を明確に禁じる条項が盛り込まれた。
CMNはこの措置について、「特定の投資特性とリスク特性」を考慮した結果であると説明している。仮想通貨は、年金基金が求める安定した収益性に適合しないとされたことが示された形となる。
また、同時に実施された規制見直しでは、プライベートエクイティ投資ファンド(FIP)への投資に関する基準と制限が強化された一方、不動産関連投資についてはルールの柔軟化が図られた。
主要国の流れとは対照的 ブラジル市場への影響とは
ブラジルの年金基金が仮想通貨への投資を禁じられたことは、米国や英国などの主要国の動きとは対照的である。
英国では2024年11月、年金サービス企業のカートライト社がビットコインを年金向けの投資ポートフォリオに加えたと発表。米国でも、ミシガン州やウィスコンシン州の公的年金がビットコイン現物ETFを購入しており、制度の整備が進む中で年金資金の一部が仮想通貨に向かう流れが強まっていると考えられる。
対してブラジルは年金基金による仮想通貨投資を禁止した。今後の資金は株式や債券など従来型の資産に向かうとみられる。これにより、ブラジル金融市場の安定性は一定程度確保されるかもしれない。
一方で、仮想通貨を排除することで、ブラジル金融市場がグローバルな資産分散の潮流から取り残されるリスクは否定できないだろう。
仮想通貨市場が今後さらに成熟し、主要国の年金基金が一定の収益をあげ始めた場合、ブラジルの年金基金は、相対的な投資パフォーマンスという点において遅れを取る可能性がある。
ブラジル当局が方針の見直しを迫られる展開も、中長期的には考えられるだろう。