DAV、輸送業界に革命を起こす分散型インフラとは | ロジスティクスに対するブロックチェーンの活用意義について
本記事は、物流×ブロックチェーンに関する事業開発に興味のあるBizDev経験者向けの記事です。
今回は、輸送業界におけるブロックチェーン応用のケーススタディとして、スイスのクリプトバレーに本拠を置くWeb3スタートアップ「DAV」に注目し、ロジスティクスへのブロックチェーンの活用意義について考察します。
輸送業界におけるブロックチェーンの活用意義
ブロックチェーン技術は、これまで暗号資産やDefiなどの「金融分野」を中心として活用されてきましたが、最近では「非金融分野」における応用が世界的に広がりを見せています。
その中でもとくに注目されているのは、輸送業界におけるブロックチェーンの応用です。その背景には、輸送業界が抱える課題やニーズに対し、それらを解決する「手段」としてブロックチェーン活用の期待が高まっていることにあります。
物流業界の課題
まず物流業界の課題から見ていきます。物流業界の課題は、主に以下のような点です。
・ネットショッピングサービスの増加による配達ドライバー不足
・倉庫の空きスペース不足
・物流データの複雑化 など
このような課題に対し、物流業界全体として「A I」や「IoT」などの最新技術を活用し、配送管理や配送方法などのDXに取り組んでいます。
しかし、このDXにおいてさらに課題となっていることがあります。それは、輸送関連企業が個別のシステムを使い、輸送情報を各々が情報を収集、管理していることです。この点はかなり前から問題視されていましたが、結局、誰が中央に立ってそれらの膨大な情報を管理するのかという問題や、その管理・運用手法について最適な解決策を見出せないことが課題となっていました。
こうした背景において、ブロックチェーン技術はこれらの課題を解決するための手段として注目され、様々な輸送分野においてロジスティクスへの応用が期待されています。
ロジスティクスにおけるブロックチェーンの活用方法
ロジスティクスへのブロックチェーンの活用方法は、以下のような活用方法が期待されています。
1、共通システムとしての台帳利用
保険会社などの輸送情報ユーザーや自動運転車などからの輸送履歴情報のアクセスが可能な台帳としての活用
2、個人情報などの漏洩リスクの最小化
政府や銀行、特定の企業によって管理されない完全に分散化されたシステムとしての活用
3、輸送サービスの提供エリアに捉われない決済手段の仕組み
自動運転車両とそれをサポートするインフラ間のグローバルな支払い基準としての活用
4、輸送情報の管理・運用の効率化
複数の車両とサービスプロバイダー間のトラストレスな連携を可能にする仕組みとしての活用
このように、輸送業界においては、ブロックチェーンだからこそ実現可能なことが多く存在します。海外ではすでにこれらのブロックチェーンの活用が社会実装され始め、分散型インフラとして効果を発揮している地域もあります。
その一例として、スイスのクリプトバレーに本拠を置くWeb3スタートアップ「DAV」が提供する輸送プロトコルに注目し、ロジスティクスへのブロックチェーン活用意義について考察します。
DAVとは
ブロックチェーンベースのオープンソース輸送プロトコル「DAV」とは?
「DAV」 は、ブロックチェーンベースのオープンソース輸送プロトコルを開発している企業です。本拠はスイスのツーク(クリプトバレーと呼ばれる地域)にあります。この地域では、DAVを中心とした「DAVアライアンス」という輸送関連企業の集合組織の活動により、ブロックチェーン ベースの輸送インフラが整備され始めています。
このDAVが提供する輸送プロトコルを活用することで、自動運転車両やトラック、ドローンなど様々な輸送交通サービスが分散的に自動連携され、ロジスティクスの効率化を実現しています。
ロジスティクスを効率化する「DAV」の3つの主要機能
DAVの技術は、主に以下 3 つの主要機能から構成されています。これらの機能の組み合わせにより、効率的なロジスティクスを実現しています。
・分散型検出機能
・通信プロトコルとしての機能
・トラストレスな連携ツールとして機能
分散型検出機能
DAVを使用することにより、自動運転車同士やサービスプロバイダー、周囲のユーザーを自動検出できることが特徴です。DAV は、中央サーバーに依存しないP2Pプロトコルを使用しているため、分散ノード検出を実装しています。その代わりにノードは非常に効率的な方法でアクセスできる分散ハッシュテーブルにリストされています。
通信プロトコルとしての機能
DAV は、さまざまな輸送シナリオ向けの標準化された通信プロトコルとなっています。この通信プロトコルは、以下 2 つのグループに分けられます。
・スマート コントラクトを呼び出すことにより、それらのスマートコントラクトによって発行されるイベントを通じて直接行われるブロックチェーン上の通信
・DAVのプロトコルを使用し、P2Pで行われるオフブロックチェーン通信
トラストレスな連携ツールとしての機能
DAVは、一連の特殊なスマートコントラクトを使用し、輸送サービスの買い手と売り手の間でトラストレスな連携を実現しています。これらのスマートコントラクトにより、買い手と売り手の間や、保険会社などの間でマルチパーティ契約が可能となっています。
さらに、これらのコントラクトはDAVトークンに直接関連付けられており、事前に確立された信頼を必要とせず、複数の当事者間のトランザクションの効率化に役立っています。
「DAV」の技術による実際の輸送関連サービスへの効果
「DAV」が実際に輸送業界にもたらしている効果として、以下のような場面で特にその効果を発揮しています。
・誰もがアクセスできる輸送情報プラットフォームと各種輸送サービスの自動連携の実現
ブロックチェーン技術の応用により、誰もが輸送情報プラットフォームにアクセスできるようになり、オープンリソースとして輸送情報が幅広く有効活用され、その利用価値が高まっています。さらに、それらの輸送情報を利用し、様々な輸送サービスが自動連携することを可能にし、サービスユーザー(市内交通サービス、駐車場サービスなどのユーザー)にとっても利便性が高まっています。
・分散型配車、配送サービスの実現(自動運転タクシー、バス、ドローンなど)
自動運転タクシーやバスなどの運転車両とそれらサービスのユーザーは、ブロックチェーンによって直接通信(P2P)ができるようになり、仲介者が収入の一部を占めることなく、分散化かつ自動化されたシステムにより、効率的なロジスティクスを実現しています。
このように様々な場面で分散型のP2P輸送エコシステムを構築し、そのネットワークは自動運転車や、トラック、ドローン、自動車などと連携しています。DAVのプロトコルを活用することにより、誰もが公平に輸送データにアクセスでき、輸送業界全体として効率的に輸送サービスを管理運用できるようになっています。
DAVの動きから今後のブロックチェーンベースの輸送インフラの展望を考察
結論として、ブロックチェーンを活用した輸送インフラは、今後日本国内でも法制度整備に伴い、以下の輸送インフラにおいて欠かせないものになると考えています。
・自動運転インフラ
・ドローン輸送インフラ
理由は、輸送業界の課題解決や生活の利便性を高めるため、今後、IoT社会及びモビリティ社会にシフトすると考えられ、そこで生まれる膨大なデータを効率的に処理するためにはAIだけでなく、ブロックチェーンの技術が必要になるからです。
その技術とは、今回ケーススタディとして取り上げた「DAV」のような技術であり、本拠をおくスイスクリプトバレーにおいて、以下のような効果を実際にもたらしています。
1、複数の輸送関連企業が個別で収集していた輸送情報が、共通のプラットフォーム上で効率的に管理運用できる。
2、プラトフォーム上の輸送情報は、オープンソースとして誰もが利用できる。
3、様々な輸送関連サービスが自動連携し、それらを利用するユーザーにとっての利便性が上がる。
このように、輸送業界においてブロックチェーンを活用するメリットは多くありますが、その一方で課題もあります。
ブロックチェーンを活用し「オープンリソース」として誰でも利用できるプラットフォームは、データが筒抜けになるという課題もあります。そこで最近では、コンソーシアムチェーンという、関係者のみがアクセスできるブロックチェーンの仕組みも注目されています。
このようにブロックチェーン技術は非金融領域において、その応用先に適した形に合うように日々改良され続けています。今後、さらに発展すると思われる輸送業界におけるブロックチェーンの活用動向を引き続き追っていきたいと思います。
参考文献
・国土交通省による「最近の物流政策について 」の資料はこちら
・国土交通省による「物流をとりまく状況と物流標準化の重要性」の資料はこちら
・DAVのホワイトペーパーはこちら
・DAV公式HPにおけるサービス紹介はこちら
・DAVの公式Twitterによる投稿はこちら
・DAVのTelegramの投稿はこちら
・DAVのMediumの記事はこちら
・DAV公式HPのDAV Allianceに関する記事はこちら
・DAVのオープンソース技術に関するGithubの開発コミュニティはこちら
・アイキャッチ画像引用元はこちら
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