米政府、12億円相当のビットコインを移動 ビットコイン戦略準備金へ動きか

米政府が2025年3月28日、タイ人のワンパデット・サエ・ヘン氏から押収した約12億円相当の仮想通貨ビットコイン(BTC)を複数のウォレットに移動させたことが明らかになった。
ブロックチェーン分析企業Arkham Intelligenceの報告によると、この資産は詐欺関連で没収されたものである。
今回の政府によるビットコインの移動は、戦略的ビットコイン準備金に関連する動きと見られている。
詐欺組織関与で押収の仮想通貨、戦略的準備金へ組み入れか
移動された仮想通貨は、ビットコイン以外にもイーサリアム、ドージコイン、カルダノなどが含まれていた。
これらの資産は、2つの異なるウォレットアドレスへと分割して送金された。
うち1つにはわずか10ドル相当が移され、残りは別のアドレスに集中した。
ドナルド・トランプ大統領の3月6日付の大統領令に基づき、押収された仮想通貨は米国の「戦略的ビットコイン準備金(※)」に追加される。
米政府の仮想通貨保有は拡大を続けており、現在では198,012ビットコインを保有していると見積もられている。その総価値は約170億ドルにのぼる。
今回の移動によって、国家主導での仮想通貨管理の本格化が一段と進むと見られており、仮想通貨市場においても注目が集まっている。
※戦略的ビットコイン準備金:政府が将来的な経済安全保障や通貨リスクに備え、ビットコインを保有・管理するための制度。従来の金や外貨準備に類似した役割を担う。
今後の展望
米政府が詐欺事件で押収した仮想通貨を戦略的ビットコイン準備金に組み入れる動きは、国家として仮想通貨を資産と認識しつつあることを示している。
これにより、政府レベルでのデジタル資産活用が進み、仮想通貨の信頼性や正当性が一層高まる可能性がある。
押収資産の再活用によって、犯罪で得られた利益が公共目的に転用される点も重要だ。
経済安全保障の観点から、ビットコインという非中央集権的な資産を備えることで、将来的なドル覇権の揺らぎや金融危機への備えとして機能する可能性がある。
押収した資産の組み入れ方や透明性にも課題が残るだろう。
仮に強制的な資産没収が今後頻発すれば、政府の介入が仮想通貨の「分散性」や「自由性」という本質と矛盾する事態にもなりかねない。
国家が保有することで、むしろ中央集権的な管理体制が強まるという逆説も孕んでいる。
仮想通貨が安全保障の文脈で語られるようになる中、今後は「サイバー戦争」や「経済制裁」といった分野においても、仮想通貨が戦略ツールとして活用される場面が増えていく可能性がある。
結果として、国家間の“ビットコイン外交”や“仮想通貨同盟”といった新たな概念が登場しても不思議ではない。