小田急ビルサービス、生成AIとノーコードを全社DX基盤に導入

2025年5月1日、小田急ビルサービスが、Allganizeの生成AI・LLMプラットフォーム「Alli LLM App Market」を全社的なDX基盤として導入したと、Allganize Japanが発表した。
日本国内のビル管理業界における生成AI活用の本格始動として注目を集めている。

導入の決め手は「ノーコード」と「透明性」

小田急ビルサービスは、急速に進展する業務のデジタル化対応として、生成AI・LLMアプリの本格導入に踏み切った。

今回採用された「Alli LLM App Market」は、Allganize社が開発・提供するビジネス特化型のAIアプリプラットフォームである。
特筆すべきは、プロンプト入力を必要とせずに即時利用可能な100以上のAIアプリを備えており、ノーコードでの独自アプリ開発が可能な点だ。

導入理由としては、標準搭載アプリの活用にとどまらず、各部署の業務内容に応じたアプリを非エンジニアでも簡便に作成できる点が大きいという。
さらに、生成AIの回答根拠が即座に可視化されることも、業務における信頼性確保の観点から高く評価されたようだ。
また、ユーザー数や管理体制に関係なく、使用量に応じた課金体系を採用しているため、導入後のコスト管理も柔軟に行えると見られている。

初期フェーズでは、報告書や稟議書の作成補助、AIチャットボットによる社内問い合わせ対応の自動化、さらに採用業務の効率化が進行中だ。
これらの用途を皮切りに、業務全体の生産性向上を見据えた全社展開が進められる見通しとなっている。

不動産・ビル管理業界に波及するAI導入の可能性と課題

Allganize社は、AI技術を用いた業務支援ソリューションで知られるグローバル企業で、日本、米国、韓国といった国での業務改善市場にも積極展開している。
同社の技術は既に複数の業界で導入実績があり、今回の小田急ビルサービスとの連携もその延長線上にあると考えられる。

ノーコードの利便性と高い透明性は強みである一方、ノーコードツールには拡張性の問題も付きまとう。
初期導入時の一部業務（文書作成、採用対応など）におけるAI活用は比較的汎用性が高い分、業界特有の複雑な管理業務への応用には段階的なチューニングと業務理解が不可欠になるだろう。
そうした個別のユースケースにノーコードでどれだけ対応ができるか、注目が集まる。

今後の展開としては、AI活用の裾野が広がる中で、各社が自社業務に最適化されたアプリケーションの開発と活用をいかに進めるかが問われる局面に差し掛かっている。
生成AIの導入が進む中で、「人の判断をどこまで残すか」「どの領域は自動化すべきでないか」といった倫理的・運用的な線引きも求められてくる。
今後の成功事例と失敗事例の蓄積が、業界全体の導入指針を形づくることになりそうだ。