Amazon、新しいAlexaにAI機能を搭載する見込み　ロイター通信が報道

Amazonが長年取り組んできた次世代Alexaの開発が、いよいよ大詰めを迎えている。ロイター通信の2025年2月5日の報道によると、Amazonは2月26日にニューヨークで記者向けイベントを開催し、生成AI技術を活用した新しいAlexaを発表する見込みだという。
この発表が実現すれば、音声アシスタント市場において重要なアップデートとなるだろう。新機能の実装により、現在のAlexaが抱える機能的な制限を大幅に改善し、より自然な対話や複雑なタスクの実行が可能になると期待されている。

次世代Alexaの新AI機能

ロイター通信の報道によると、新しいAlexaは、マルチターン対話と呼ばれる連続的な会話機能の実装が大きな特徴となっている。現行のAlexaは基本的に1回の指示に対して1つの応答しか行えないが、新バージョンでは文脈を理解しながら複数の指示や質問に連続して対応できるようになる。たとえば、ハンバーガーの注文時に具材の変更や追加を連続して行えるなど、より自然な対話が可能になるという。

さらに注目すべき点は、AIエージェント機能の実装である。
この機能の実現には、Amazonが80億ドルを投資したAI企業Anthropicの大規模言語モデル技術が活用されているとされる。Anthropicは、OpenAIの元研究者らが設立した企業で、その代表的なAIモデル「Claude」は高い精度と安全性で知られている。

Anthropicの技術を活用することで、Alexaは単なる命令実行だけでなく、ユーザーの好みや行動パターンを学習し、より主体的な支援を可能にするという。
たとえば、ユーザーの予定表から会議の時間を把握し、事前に必要な資料の準備を促したり、過去の買い物履歴から必要な日用品の在庫が少なくなりそうな時期を予測して購入を提案したりするなど、より自律的な支援が実現する見込みである。

開発遅延の背景と技術的課題

新機能の実装に際して、Amazonの開発チームは複数の技術的課題に直面してきた。
ロイター通信によると、2023年9月には社内向けデモンストレーションが実施されたものの、品質面での懸念から一般公開は見送られたという。特に重要な課題として、AIハルシネーション（AI による誤った情報の生成）の防止が挙げられる。
Amazonのプラサド執行役員はフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、「ハルシネーションの完全な排除に向けた取り組みが不可欠」と述べており、この問題の解決に多くの時間を費やしてきた。

また、5億台以上のデバイスに搭載されているAlexaの応答速度の最適化も重要な課題となっている。生成AI機能の追加により処理負荷が増大する中、既存のデバイスでも快適に動作するよう、システムの最適化が進められている。
特に、週間数十億件に及ぶリクエストを処理する必要があり、さらにサードパーティ製アプリケーションとの連携においても安定した応答速度を維持する必要がある。こうした技術的ハードルの克服に時間を要し、当初の計画から発表時期が後ろ倒しとなったのが、発表の延期の経緯だ。社内では品質管理に特に慎重な姿勢を示しており、2月14日の最終判断会議でも、応答品質とパフォーマンスの両面から厳格な評価が行われる見通しである。

まとめ

ロイター通信によると、Amazonは2月14日に「Go/No-go」と呼ばれる最終判断会議を開催し、新機能の本格展開について決定を下す予定だという。当初は有料サービスとして月額5〜10ドルでの提供が検討されているものの、まずは限定的なユーザーに対して無料で提供される見込みである。
既存の「Classic Alexa」も無料サービスとして継続される予定だ。

音声アシスタント市場における競争が激化する中、Amazonの今回の取り組みは、AI技術の実用化における重要な指標となることが予想される。特に、生成AI技術の実装における技術的課題の解決方法は、今後の業界全体の発展に大きな影響を与える可能性を秘めている。