中国発AI「Manus」の親会社、Benchmarkから110億円調達　日本市場にも進出へ

中国発のAIエージェント「Manus」を手がける蝴蝶効応（Butterfly Effect）が、米Benchmark Capitalから7500万ドル（約110億円）の資金を調達したと、2025年5月8日に報じられた。
調達資金はサービス強化と日本を含む海外展開に充てられる見通しである。

自律型AI「Manus」が注目集める背景と急成長の理由

蝴蝶効応は2022年に設立された中国のスタートアップで、AI技術を活用した革新的サービスの開発を目的としている。
同社が開発するManusは、完全自律型の汎用AIエージェントとして知られ、単なる質問応答にとどまらず、ユーザーの代わりにタスクそのものを完了できるのが最大の特徴だ。

今回のBenchmark Capitalによる出資は初の海外主導ラウンドとなる。
評価額は調達前の1億ドルから一気に5億ドルに跳ね上がり、市場の注目度の高さがうかがえる。

調達した資金は、Manusのサーバー処理能力の強化やユーザー体験の改善に充てられる見通しである。
現状では月額39ドルから199ドルという価格設定により、収益を維持しつつサービスを限定提供しているが、サーバー負荷の問題やアクセス制限が課題となっている。

この制約を乗り越えた先にあるのが、日本を含む海外市場への本格進出である。
報道によると、蝴蝶効応はすでに日本に拠点を設ける準備をしており、競争が激しい生成AI市場に新たなプレイヤーとして参入する構えだ。

国際競争で勝ち残れるか　Manusに求められる“独自性”と“信頼性”

Manusの今後の展開は、グローバル市場への適応力と技術的な独自性の確立にかかっている。
日本への進出は、言語的・文化的な障壁の高い市場に対する試金石となり、成功すれば他のアジア諸国や欧米市場への足掛かりとなるだろう。

競争環境としては、OpenAIのChatGPTやAnthropicのClaudeなど、すでに高性能かつ認知度の高いAIエージェントが存在しており、新興プレイヤーであるManusがシェアを拡大するには、明確な差別化要素とユーザーに訴求する実用性が必要不可欠である。

加えて、倫理的・法的な側面にも注視する必要がある。
タスク遂行型AIは、個人情報や業務上の機密データを扱う機会が多いため、プライバシー保護やアルゴリズムの透明性といった規制対応が国ごとに求められる。

総じて、蝴蝶効応が掲げる「自律型AIによるタスク遂行」というコンセプトは、ポテンシャルが高い。
一方で、それを支えるインフラ、倫理的枠組み、そしてグローバル対応力の整備がなされなければ、国際競争で埋没するリスクもある。
今後数年が、Manusの実力と真価が問われる重要な時期になると考えられる。