AIが守る建設現場の未来 香港発ViActが10億円超を調達し、安全監視技術を加速

2025年4月16日、香港のスタートアップViAct(ヴィアクト)が約10億4000万円の資金を調達したことが発表された。AIによる建設現場の安全監視技術を開発する同社は、今回の資金を活用しソフトウェアの改良を進める。これは、建設業界のデジタル化と安全性向上の潮流を象徴する海外発の注目動向である。
建設業界の死角を補うAI ViActの技術と調達背景
建設現場の事故や労働災害は、いまだ多くの国で深刻な課題として残されている。
そんな中、ViActは2016年に香港で設立され、AIによる映像解析技術を用いて建設現場の安全監視に取り組んできた。共同創業者ギャリー・ウンは建築技師としての経験を持ち、現場のニーズを熟知する人物である。
同社が開発したコンピュータビジョン・ソフトウェアは、現場に設置された監視カメラの映像をリアルタイムで解析し、作業員の転落や接触事故などのリスクを即座に検知。危険が察知されると即時にアラートを発信し、関係機関へ通知する機能を備える。この技術は既に石油、ガス、鉱業、製造業といった多様な産業の現場300カ所以上に導入されている。
2025年4月16日に発表されたシリーズAラウンドでは、アイルランドのVenturewave Capitalがリード投資家を務め、Singtel Innov8や韓国投資パートナーズ、香港理工大学の起業家支援ファンドなどが参加した。
なお、同社は2021年にもアリババ創業者の基金から200万ドルを調達している実績がある。
ドローン連携と環境監視で広がる応用 業界全体の未来とViActの立ち位置
ViActは今後、AIソフトウェアのアップグレードにとどまらず、ハードウェアとの連携にも注力する方針だ。特にドローンやロボットとの協働は、高所作業や危険地域の監視において大きな進化をもたらす可能性がある。
すでに高層ビルの外壁検査や、進捗の可視化といった応用が視野に入っており、現場作業の効率化と安全性向上の両立が期待されている。
この流れは、建設業界におけるデジタル化という大きなトレンドとも合致する。従来は人力に頼っていた監視や記録が、AIとIoTによって自動化されつつあり、ViActはその波の先頭を走る存在だ。
また、近年のESG(※)志向の高まりにより、作業環境だけでなく環境モニタリングへの対応も求められつつある。ViActの技術は、粉塵や騒音などのリアルタイム監視への応用も視野に入れ、持続可能な建設現場の構築を支援するものになるだろう。
建設業界は依然として人的リスクが高い分野である。だが、こうしたAI主導の技術が進化し続けることで、「危険をゼロに近づける」現実的な未来が見えてきた。
今後、日本国内の建設業界にもこうした海外技術の導入が加速する可能性があるのではないだろうか。
※ESG:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った略語。企業活動における持続可能性を測る基準として注目されている。
参照元:https://www.viact.ai/post/series-a-mena-europe-expansion