AI普及でデータセンターの電力需要倍増へ IEAが持続可能性に警鐘

2025年4月10日、国際エネルギー機関(IEA)は、AIの急速な普及によってデータセンターの電力消費が2030年までに2倍以上に拡大する見通しを発表した。
世界の電力供給や脱炭素化戦略に新たな課題が突きつけられた形だ。
AIが生み出す電力需要の急拡大、IEAが描く2030年の現実
IEAが公表した報告書によれば、世界のデータセンターが消費する電力量は2024年の時点で、全体の約1.5%に達しており、過去5年間で年間平均12%のペースで増加しているという。
この上昇傾向はAIの進化と密接に結びついており、特に生成AIのような高負荷な計算処理を必要とする技術の拡大が大きく影響している。
現時点で世界のデータセンターによる電力使用の85%は、米国、欧州、中国の3地域に集中している。
これらの地域ではインフラの整備が進んでいる一方で、再生可能エネルギーの導入スピードが電力需要の急拡大に追いついていない状況だ。
AIが求める高度な計算能力は、GPUや高性能プロセッサを大量に稼働させる必要があり、その稼働には莫大な電力が必要になる。
IEAは、2030年までにデータセンターの電力消費が現在の約2倍、945テラワット時(TWh)に達すると見積もっている。
この数値は、日本全体の年間電力消費量をわずかに上回る規模であり、単なる産業の一部という枠を超え、国家レベルのエネルギー政策にも影響を及ぼす規模だと言える。
AIの恩恵と引き換えに問われる電力インフラの持続性
IEAの報告は、AI技術が抱えるリスクに対する警鐘であると同時に、活用次第ではエネルギー分野そのものを効率化する可能性にも言及している。
AIは、発電設備の需給予測の精度を高めたり、電力消費の最適化を自動化することで、全体のエネルギー効率を引き上げるツールにもなり得る。
特にスマートグリッド(※)の高度化において、AIは中核的な役割を果たすと期待されている。
しかし、このような恩恵を実現するためには、AIインフラそのものの電力消費をいかに抑えるかという根本的な課題を避けては通れない。
データセンターの冷却効率改善や再生可能エネルギーによる電源確保といった技術革新はもちろん、政策面での支援と国際的な協調も必要になるだろう。
AIがもたらすビジネス競争力の強化と環境負荷の抑制、そのバランスをいかに取るか。
企業はコストやスピードだけでなく、持続可能性という新たな評価軸のもとで、AI活用の戦略を再設計する時期に差しかかっている。
※スマートグリッド:情報通信技術(ICT)を活用し、電力の需給をリアルタイムで最適化する次世代送電網。電力の無駄を削減し、再エネ導入の柔軟性を高める。