東京消防庁、生成AIを活用した救急医療システムの実証検証を開始

東京消防庁は、生成AI技術を活用した救急医療システム「NSER mobile」の実証検証を開始した。

現場での患者情報の入力が効率化され、医療機関との連携が迅速かつ円滑になることが期待されている。最終的には、救急活動全体のスピードと質を向上させることが目標だ。

実証期間は2024年11月1日から2025年4月までと計画されている。2024年11月・12月にはシナリオによるデモンストレーションが行われ、2025年1月以降に都内救急実搬送にて利用される予定だ。期間中にシステムの有効性と課題を検証する。

実証検証の背景

東京消防庁が今回の実証検証に踏み切った背景には、救急活動を取り巻く複数の課題がある。

まず、救急要請件数の増加があげられる。とくに東京をはじめとする都市部では、少子高齢化や交通事故の多発によって医療需要が増加し、出動件数が年々増加している。

その結果、救急隊員の業務負担が増大しており、情報管理の効率化が急務となっている。

また、救急現場では患者の状態や処置内容を迅速かつ正確に記録し、医療機関へ伝達することが求められる。

しかし、従来の手動入力では時間がかかり、現場の負担が大きいという問題があった。この状況を改善するため、東京消防庁はTXP Medical株式会社と共同で、音声入力によって情報を自動的に整理するシステム「NSER mobile」を開発した。

救急医療システムの効果と今後の展望

今回のシステム導入により、いくつかの効果が見込まれている。

まず、音声入力によって情報入力が効率化され、現場での作業負担が軽減される。

さらに、リアルタイムで医療機関に情報が共有されることで、患者受け入れ準備が迅速化し、治療開始までの時間短縮が期待されている。結果として、救命率の向上にも寄与する可能性がある。

一方で、課題も存在する。騒音や多様な状況が発生する現場環境では、音声認識の精度が低下するリスクがある。

また、導入・運用にかかるコストや、データのセキュリティ対策も重要な検討事項だ。これらの課題を解決することで、システムの普及と全国展開が現実味を帯びてくるだろう。

今後、実証が成功すれば、他の自治体や医療機関への展開も視野に入る。

とくに救急要請が多い都市部では、業務効率化と患者対応の迅速化に大きく貢献することが期待される。

また、地方自治体においても、このシステムが人手不足解消に役立つと考えられている。こうした技術革新を進めることで、日本の救急医療体制全体がより高度なものへと進化する可能性が期待されている。