Bybitで史上最大規模のハッキング、仮想通貨市場に激震

2025年2月22日未明に発表されたBybitのハッキング事件は、仮想通貨市場に大きな衝撃を与えた。約14億6000万ドル相当のイーサリアムが盗まれ、ビットコインやイーサリアムの価格が急落した。
本稿では、事件の概要、市場への影響、Bybitの対応、そして今後について詳述する。

Bybitハッキング事件の詳細と市場への影響

ドバイに本社を置く大手仮想通貨取引所Bybitが、2025年2月21日に大規模なハッキングを受けた。盗まれたのは約14億6000万ドル相当のイーサリアムで、同社のマルチシグコールドウォレットから不正に送金されたようだ。

この事件は、仮想通貨市場に大きな影響を与えた。特にビットコインは一時95,000ドルを下回る急落を見せ、イーサリアムも大幅な価格下落に見舞われた。アルトコイン市場もほぼ全面安となり、市場全体のボラティリティが高まった。

ハッカーは、イーサリアム（ETH）コールドウォレットの署名者を欺き、資金を未知のアドレスに転送したとされる。流出したETHは、Bybitが管理する総資産のおよそ20分の1に相当し、仮想通貨業界におけるセキュリティの重要性を改めて浮き彫りにした。

Bybitの対応と今後

BybitのCEO、ベン・ゾウ氏は、顧客の資金は安全であり、必要に応じてパートナーからの融資を利用して損失を補填する意向を示した。また、ハッキング後には顧客への支払い能力に問題がないことを強調し、取引所の資産は1対1でバックアップされていると述べた。
また、Bybitは、ハッキングされた資金の10%を報奨金として提供することを発表し、資金回収に向けた取り組みを進めている。

今回の事件を受け、仮想通貨業界はセキュリティ強化の必要性を再認識することになるだろう。特に、コールドウォレットの管理手法や多重署名システムの運用が見直され、より堅牢な仕組みへと進化する可能性が高い。
市場の反応としては、短期的な売りが先行したが、中長期的にはセキュリティ強化の動きが進めば、一定の安心感が戻ることも考えられる。また、分散型金融（DeFi）や自己管理型ウォレットの重要性が再評価されることで、中央集権型取引所依存の低減につながるかもしれない。

規制面では、各国の金融当局が取引所に対する監視を強める可能性がある。
特に、ユーザー資産の管理方法やハッキング対策に関する基準が厳格化されることが予想される。一方で、これに適応できる取引所は信頼性を高め、競争力を維持できるかもしれない。

総じて、今回のハッキングは業界にとって大きな試練だが、これを契機にセキュリティ強化や規制整備が進めば、長期的には市場の健全性向上につながる可能性もあるだろう。

※マルチシグコールドウォレット: 複数の署名者が共同で管理するオフラインのウォレット。