イタリアでAIが全面製作する新聞が登場 「フォリオ」が実証実験を開始

2025年4月5日の報道によると、イタリアの日刊紙「フォリオ」が、人工知能(AI)を全面的に活用して製作した新聞を3月から発行している。この試みは世界初とされ、AIが記事の生成から編集まで担う実証実験として注目を集めている。
人間の手を介さずに完成する新聞 AIが変える編集のあり方とは
AIによって製作された新聞は、火曜から金曜までの週4回発行され、通常の新聞とともに配布されている。
AIが主導するのは記事の生成だけにとどまらず、見出しの作成や構成全体の編集作業までを一貫して行う点が最大の特徴である。すべてのページがAIによって完成される新聞は、世界的に見ても前例がなく、大きな注目を浴びている。
記事の執筆に使用されているのは、対話型生成AI「ChatGPT」。記者がテーマや必要な文字数を入力することで、平均5分ほどで記事が完成する。人間による手直しは行われず、完成品はそのまま紙面に反映されるという。
こうした仕組みにより、従来の新聞製作に比べて圧倒的な時間短縮とコスト削減が期待されている。
ただし、全てをAIに委ねる編集手法にはリスクもある。情報の正確性や倫理的な判断が機械だけで十分に担保されるのかについて、メディア研究者の間では議論が続いている。
特に政治的・社会的なセンシティブな話題については、AIの判断が偏る可能性や、誤解を生む表現が混入するリスクが指摘されているという。
実際に発行された新聞の1面には、トランプ米大統領の新たな外交戦略についての記事が掲載され、カナダおよびメキシコの指導者の支持率上昇にも言及。国際政治を扱うセンシティブなトピックをAIがどう調理するかという観点からも、この取り組みの精度や信頼性が問われることになるだろう。
AI新聞の未来と影響力 メディアの「自動化」はどこまで進むのか
フォリオによるAI新聞の発行は、現時点では1カ月限定の実証実験とされている。だが、技術的な完成度や読者の反応次第では、長期的な運用や他媒体への波及も見込まれる。
特に、リソースが限られる地方紙や専門誌にとっては、AI導入による省力化の恩恵が大きく、関心が高まる可能性がある。
一方で、AIによる自動生成記事の普及は、ジャーナリズムの本質にも問いを投げかける。人間の記者が持つ取材力、現場での判断、感情の機微といった要素は、現在のAIには再現が難しい。
したがって、AI新聞が一般化しても、それは補完的な位置づけにとどまり、あくまで人間のジャーナリズムと共存する形が現実的だろう。
マーケティングの観点では、AI新聞は新たな読者層の開拓や話題性によるSNS拡散効果も期待される。特にテクノロジー志向の若年層や情報感度の高いビジネスパーソンにとって、「AIが作った新聞」という話題性は十分な魅力となり得る。
今回の「フォリオ」の挑戦は、メディアとAIの新たな関係性を問う試金石と言えそうだ。