生成AIで変わる不登校支援の現場 成基が調査結果を発表

2025年4月3日、株式会社成基(日本)が、生成AIを活用した不登校支援の調査結果を発表した。AI技術とリアルな人との関わりが子どもたちの成長にどう作用するかが明らかとなった。
AIの「先生」と過ごした日々が浮き彫りにした支援の可能性と限界
成基が運営するオンラインフリースクール「シンガク」において、中学1・2年生の不登校経験者19名を対象に、生成AIによる支援の有効性を検証する調査が行われた。この研究成果は、2025年3月23日に開催された「AI時代の教育学会」で報告され、4月3日に成基より正式に発表された。
注目すべきは、使用されたAIが「AIの村上先生」と名付けられていた点にある。
このAIは、シンガク教室長・村上実優氏の外見、話し方、言葉遣いといった個人特性を学習し、本人に限りなく近い存在として設計された。生徒たちは、時間の制約がなくいつでも利用できる点や、多様な情報を得られる点を高く評価した一方、対話の面白さや自然なやり取りにおいてはリアルな村上氏に軍配を上げた。
特に印象的なのは、AIでは補えない“人間らしさ”の重要性が明示されたことだ。
継続的な会話を成立させるには、創造性や柔軟な応答、共感的な姿勢が必要不可欠であり、それがAIには難しいと生徒自身が実感していた。
この調査を通じて、生成AIが学習支援や情報収集の手段として有効であることが確認された。しかし一方で、心理的な支えや対話の深まりといった面では、人間ならではの関わりが求められるという認識が浮かび上がった。
今後の課題、生成AIとリアルな関わりの最適バランスを図る
AIの利便性を活かしつつ、人間的な関わりをどう共存させるか。
この問いは、不登校支援の領域に限らず、教育分野全体が抱えるテーマであろう。
成基は今回の調査結果を踏まえ、生成AIを活用することで「誰かと話すことに不安を感じる子どもたちでも、気軽に相談できる環境がつくれる」と語っている。
同時に、子どもたちがリアルな体験を通じて外部とのつながりを回復し、将来の目標や興味を見つけるには「人とのリアルな接触が不可欠である」とも指摘した。
AIが補完的な支援を可能にする一方で、社会性や自己理解の深化には人間の力が必要であるという認識を改めて示した形だろう。
村上氏も、生成AIの効果的な活用を模索しながら、今後は子どもたちのリアルな声を起点とした開発や支援策を進めていく意向を明かしている。今後は、AIと人間の「役割分担」を最適化し、支援の質を高めるアプローチが注目されると思われる。
生成AIの進化が止まらない中で、テクノロジーだけでは解決できない“人のあたたかさ”に、いま改めて光が当たっているのではないだろうか。