日本郵船とPolaris.AI、船舶管理の文書検索をAIで効率化

2025年4月2日、日本郵船と東京大学松尾研究室発のスタートアップであるPolaris.AIが、船舶管理に関する膨大な文書の検索効率を向上させるRAGアプリケーションの開発を共同で進めていることが、Polaris.AIによって発表された。
10万ページを超える資料から必要な情報を迅速に取得できるようになる見込みだ。
船舶管理における文書検索の課題とAI導入の効果
日本郵船は、船舶の運航やメンテナンスに関する大量の文書を管理しており、これらの情報を効率的に検索することが長年の課題となっていた。
特に、船の取扱説明書やオペレーション手順書などの完成図書は数百冊に及び、内容も複雑であるため、必要な情報を探し出すには相応の経験と時間が必要だった。
この課題を解消すべく、日本郵船はPolaris.AIと連携し、最先端の生成AI技術を取り入れたRAG(検索拡張生成)アプリケーションの共同開発を開始した。
この技術は、あらかじめ登録された10万ページ以上の文書を対象に、AIが文脈を理解しながら最適な回答を生成するもので、従来のキーワードベースの検索とは異なり、質問の意図に沿った情報を提供することが可能となる。
開発パートナーであるPolaris.AIは、東京大学松尾研究室発のAIスタートアップであり、今回のプロジェクトでは技術的中核を担っている。
データの前処理や回答内容の精査、アルゴリズムの最適化といった一連の工程を経て、RAGの回答精度は初期の約60%から80%以上へと向上した。
さらに、ユーザー体験の向上にも注力しており、検索結果の表示速度を高速化したほか、対象船舶の選択機能の追加や、参照元情報の明示といった改善を加え、現場担当者が直感的に操作できるインターフェースを実現している。
海運業界への影響と今後の展望
このRAGアプリケーションの導入により、日本郵船は船舶管理業務の効率化と迅速な情報取得を実現し、運航の安全性と信頼性の向上が期待される。
この取り組みは、海運業界全体における文書管理の効率化とデジタル化を促進し、他の企業にも波及効果をもたらす可能性がある。
また、他の海運企業への技術展開が期待される。日本郵船が先駆けて導入したこのシステムは、同業他社にとっても有益なモデルケースとなるだろう。
業界全体での文書管理のデジタル化と効率化が進むことで、海運業界全体の競争力向上につながると考えられる。
さらに、Polaris.AIの技術力を活用した新たなAIソリューションの開発も視野に入る。
船舶管理以外の分野、たとえば物流や倉庫管理など、関連業務への応用が検討される可能性がある。これにより、海運業界全体のデジタルトランスフォーメーションが加速し、業務プロセスの最適化が進むと期待される。
以上のように、RAGアプリケーションの導入は、船舶管理の効率化だけでなく、海運業界全体のデジタル化と国際的な連携強化にも寄与する可能性がある。
今後の技術進化と業界全体での取り組みに注目したい。