三井住友銀行が法人営業にAIを導入 富士通との連携で提案力の強化を目指す

2025年4月3日、三井住友銀行が富士通とのAI連携を法人営業部門に導入する方針であることが報じられた。
特に需要予測や業務効率化、資金調達の支援に焦点が当てられており、営業の質を革新する取り組みとして注目される。
富士通のAI技術を活用した業務効率化の取り組み
三井住友銀行が富士通と進めるAI連携は、営業提案の高度化を目的としている。
特に法人営業では、顧客企業のニーズを先読みした提案が求められるため、AIによる需要予測はその中核を担う存在になると考えられる。
富士通のAI技術は、飲食チェーンなどの来店データや売上データを解析し、精緻な予測を導き出す仕組みだ。営業担当者はこれにより、現場の状況を反映した提案を迅速かつ的確に行えるようになる。
このAIは単なる予測ツールに留まらない。
得られたデータは人員配置の調整、食材の発注、物流ルートの最適化といった業務改善にも活用され、顧客企業のオペレーション効率を大幅に高める。
さらには、予測結果を根拠とした資金調達支援にも展開される見通しであり、投資判断やキャッシュフローの管理といった経営判断にまで踏み込む提案が可能になる。
対象企業は主に上場大企業が想定されており、一部中堅企業にも導入を広げる計画だ。
三井住友銀行は顧客企業からのデータ提供を受け、富士通のAIでこれを解析し、その結果を営業活動に反映させるという構図が描かれている。
今回の連携は技術導入だけではなく、変化する業界環境への対応でもある。
日本企業は現在、人手不足や人件費の上昇といった構造的課題に直面しており、AIによる業務効率化は即効性のある対策とされている。
特に銀行業界では、金利上昇による融資競争の激化が進行中であるため、精度の高い提案による差別化が急務だ。
富士通側にとっても、この連携は新たな販路拡大の機会である。
銀行の顧客網を活用することで、自社の需要予測AIを幅広い業種へ展開する布石とする構えだ。
今後の展望
今後は、営業提案の自動化や他業種への応用といった展開も視野に入ると考えられる。
両社の連携は、AIを用いた新たな営業戦略の一例として、他の金融機関やIT企業に波及する可能性もあるだろう。
テクノロジーと金融が交差するこの取り組みは、法人営業の在り方そのものを大きく変える契機になり得る。
この取り組みが成果を上げれば、他の金融機関による類似技術の導入が検討されることも想定される。とりわけ、需要予測の精度向上や業務効率化の実現は、顧客企業への提供価値を高める要因となるだろう。
一方で、AIの活用が進むほどに業務プロセスや組織文化に対する見直しが迫られる可能性もある。
また、AI技術の進化スピードは速いため、継続的な投資とアップデート対応が必要となるだろう。そのため、技術パートナーとの協力関係を維持しつつ、最新の技術動向を継続的に把握しておくことが重要だ。
今後、三井住友銀行と富士通は、金融業界におけるデジタルトランスフォーメーションの牽引役としての地位を確立していく可能性が高いだろう。