AIが切り拓く新時代の入学式　静岡産業大学が多言語対応で国際化を加速

2025年4月2日、静岡産業大学が開催した入学式では、学長が生成AIを用いて多言語でのメッセージを発信した。国際化が進むキャンパスにおいて、AIが教育現場にもたらす変革の一例と言える。

多国籍化する学生社会に向けたAI活用

近年、日本国内の大学では留学生の受け入れが加速しており、言語の壁が課題となっている。特に、入学直後は日本語に不安を抱える留学生も少なくない。
こうした状況を踏まえ、静岡産業大学はAI技術を活用し、言語面での負担を軽減する取り組みを行った。

同大学の堀川知廣学長は、新入生に向けたメッセージを日本語のみならず、インドネシア語、ベトナム語、英語など7か国語で生成・配信した。
これにより、多様なバックグラウンドを持つ留学生も、母国語で学長のメッセージを受け取ることが可能となった。

この取り組みは、単なる技術の導入にとどまらない。言語の壁を取り払うことで、留学生の心理的ハードルを下げ、新生活への期待感を高める狙いがある。
さらに、日本社会にスムーズに適応するための一助ともなる。

堀川学長は「AIを活用し、学生一人ひとりが持つ可能性を最大限に引き出す環境を整えたい」と述べている。多言語対応を一時的な施策とせず、AIを活用した授業の開発にも注力していく方針だ。

AI技術が大学の国際化を加速　今後の展望と課題

静岡産業大学の試みは、他の教育機関にも広がっていく可能性が高い。特に、国際化を推進する大学では、AIを活用した多言語対応が標準化していくと考えられる。
これにより、留学生の受け入れがスムーズになり、大学間の国際的な交流がさらに活発化するだろう。

AIの活用は留学生だけでなく、日本人学生にも新たな学びの機会を提供する。例えば、リアルタイム翻訳技術を活用した講義の多言語配信が進めば、日本人学生も異文化に触れる機会が増え、グローバルな視点を養うことができる。

一方で、AI翻訳の精度向上には継続的な改良が必要だ。特に、今回のようなフォーマルなスピーチでは微細なニュアンスや文化的背景を考慮する必要があり、単純な翻訳では意図が正確に伝わらないこともあり得る。

また、AIに依存しすぎることで、言語学習の機会が減少する懸念もある。AI技術の導入が、結果的に言語習得意欲の低下を招かないようなバランスが求められる。

AI技術の進化が教育の在り方を変えつつある現在、大学はその活用をどのように教育の質向上につなげるかが問われている。静岡産業大学の事例は、その方向性を示す一つのモデルケースとなるのではないだろうか。