AIを農業に応用　愛媛県がスマート農業で1位を目指す

2025年4月2日、FNNは、日本国内での柑橘類の生産を巡る競争について報じた。
和歌山県に次ぐ生産量を維持する愛媛県が、AIを活用したスマート農業を導入し、収穫量と収益性の両面で巻き返しを図っている。

AIとブランド品種で収穫量と収益性を同時に狙う愛媛県の戦略

愛媛県は2022年、全国2位の柑橘類収穫量18万8763トンを記録した。
前年より約7000トン減少した背景には、周期的に収穫量が減る「裏年」があり、同年が豊作の「表年」にあたった和歌山県との差が開いたとされる。
この競争は、気候と生産周期に翻弄される地域間競争の象徴ともいえる。

愛媛県は、再び収穫量1位の座を奪還するために、AIやIoTを活用したスマート農業（※）の導入を加速させている。
収穫量の予測には気象や土壌のビッグデータが用いられ、ドローンによる園地のモニタリングや、自動灌漑システムによる水管理の最適化が進められている。
これらの技術は、現場の勘や経験に依存しがちだった従来の農業において、再現性と効率性をもたらす手段と位置づけられている。

さらに、収益性の高いブランド品種への転換を目指しており、その一例が「紅プリンセス」への品種転換だ。
このブランドは愛媛県が開発した新品種のかんきつで、ゼリーのような食感と濃厚な甘みが特徴だという。
5キロ入りの１箱で7000円前後で取引されるなど、高単価の実現が期待され、単なる量の勝負から、質と収益の競争へとシフトする狙いが見て取れる。

※スマート農業：
AI（人工知能）、IoT（モノのインターネット）、ロボットなどの先端技術を導入することで、農作業の効率化や最適化を図る農業形態。気象予測や土壌分析をもとにした精密な施肥・灌漑、収穫タイミングの最適化などが可能になる。

AIによる持続可能な農業への道筋

AIを用いたスマート農業の導入は、多くの利点をもたらす可能性がある。
まず、気候変動や「裏年」といった不確定要素に左右されがちだった収穫量の予測精度が向上することで、安定的な農業経営につながると期待できる。
AIを搭載したロボットやドローンにより、人手不足が深刻な農業現場で作業の省力化が進む。高齢化が進む中で、持続可能な営農体制の構築に寄与するだろう。

一方で、導入初期にかかるコストは依然として高く、専門知識の不足や技術運用の難しさが、小規模農家の参入を阻む要因となっている。
また、農業データが外部のプラットフォームに蓄積される場合、情報の漏洩や不正利用のリスクも無視できない。セキュリティ対策が不可欠だ。
このため、県や国による技術支援や導入補助が今後の普及において不可欠だと考えられる。

今後、愛媛県のスマート農業とブランド品種戦略は、国内農業に一つのモデルケースを示す可能性がある。
愛媛県の取り組みが成功すれば、他の地域も追随し、農業分野におけるAIやIoT導入が全国的に広がるだろう。

ただし、その成功には、行政の支援も不可欠だろう。
愛媛県が適切な支援を実行できるかどうかに、注目が集まっている。