半導体大手UMC、シンガポール東部に新工場を開設　2026年末に量産開始へ

2025年4月1日、台湾の半導体メーカーUMC（聯華電子）は、シンガポール東部に開設した新工場の開所式を実施した。同工場では22nmおよび28nmプロセス技術を活用し、通信システムやIoT、自動車、AI向けの半導体ウエハーを生産する。

新工場の概要とUMCの戦略的狙い

UMCの新工場は、シンガポール東部の「ウエハーファブ・パーク」に位置し、先進的な半導体製造拠点として設計された。
投資額は約50億米ドル（約7,480億円）にのぼり、2026年末からの量産開始を予定している。

初期の生産能力は月間3万枚のウエハーで、将来的には年間100万枚規模への拡張が見込まれている。
22nmおよび28nmプロセス技術（※1）を用いた製品は、通信システム、IoT、自動車、AI分野における需要に応えるものだ。

新工場は環境への配慮も重視しており、シンガポール建築建設庁（BCA）から「グリーンマーク」の「ゴールド」認証を取得している。
工場の屋上には17,949平方メートルの太陽光パネルが設置され、再生可能エネルギーの活用にも積極的に取り組んでいる。

※1 22nm/28nmプロセス技術： 半導体の製造におけるプロセス技術の一種で、回路線幅が22nmまたは28nmの微細加工技術を指す。これらのプロセスは、消費電力の低減と高性能化のバランスが取れており、特に自動車やIoT機器向けのチップで需要が高まっている。

市場動向と今後の展望

半導体市場において、22nmおよび28nmプロセス技術の需要は拡大を続けている。特に、自動車産業では、電動化やADAS（先進運転支援システム ※2）の普及により、高性能な半導体の需要が急増している。
また、IoTやAI分野でも、低消費電力かつコストパフォーマンスに優れた半導体が求められており、UMCの生産能力強化は市場ニーズに即した動きといえる。

UMCは今回の投資を通じて、これらの分野での競争力を強化し、グローバルな顧客基盤の拡大を狙う。
また、新工場の開設により、プロセスエンジニアや研究開発エンジニアを中心に700人の新規雇用を創出する計画だ。これにより、シンガポールの半導体産業全体の発展にも寄与することが期待される。

UMCの新工場開設が世界的な半導体供給網に与える影響にも注目が集まる。特に、地政学的リスクの分散やサプライチェーンの強靭化といった観点から、東南アジアにおける半導体製造拠点の重要性が増している。
UMCの新工場は、このトレンドを象徴するものといえるだろう。

※2 ADAS（先進運転支援システム）： 車両の安全性や運転支援を目的としたシステムの総称。センサーやカメラを活用し、衝突回避、車線維持支援、クルーズコントロールなどを行う技術を含む。自動車の電動化・自動運転化に伴い、半導体の需要が高まっている。