公取委、AI監視強化へ新部署発足 デジタル巨大企業への規制体制を本格化

2025年4月1日、公正取引委員会は、海外の巨大IT企業に対抗する新たな専任部署を発足した。
新たな部署は、人工知能(AI)を含むデジタル分野の実態調査を担当する。海外の巨大IT企業の問題行動に、迅速に対応することを目指すものだ。
AI実態調査と法執行を担う新部署、テクノロジストを採用
公正取引委員会は、デジタル市場における公正な競争環境を守るべく、2025年4月1日に新たな組織体制を発足させた。
従来の3倍にあたる60人体制でデジタル領域の監視強化を進める構えだ。
この部署の目的の一つが、2025年12月に全面施行される予定の「スマホソフトウェア競争促進法」(※)の執行である。
この法律はスマホソフト向け独占禁止法とも呼べるもので、アプリストアやOSレベルでの不公正な取引慣行を是正し、消費者や開発者の選択肢を確保することを目的とした法律だ。
加えて、急速に進化する人工知能分野についても、利用実態や競争上の問題を把握するための専門的調査が行われることになっている。
新部署設立に際しては、民間からセキュリティやクラウド技術に精通した人材を採用し、チーフテクノロジストのポジションを新設。
これにより技術的知見を政策に反映しやすい体制が整備された。
また、新部署のトップには、これまで企業結合を担当してきた佐久間正哉氏が就任。
巨大IT企業の法務・経済分析に対抗するため、専門知識と経験を兼ね備えた布陣を敷いたかたちだ。
新部署はデジタル分野での政策立案能力も備えており、立法の分野でも活躍が期待される。
※スマホソフトウェア競争促進法
OSやアプリ配信に関する市場の不公正取引を是正するための法律。アプリの事前インストール義務化や他ストア排除などの行為を規制することを目的としている。
巨大テック企業やAI分野への監視強化
今回の新部署新設の背景には、GAFAなどの巨大テック企業が持つ巨大な資金力と、巧緻な法務・政策ロビー活動に対抗する必要性がある。
欧米ではすでに同様の規制機関が確立されており、日本も遅れを取らぬようにと体制整備が急がれてきた。
またGAFAへの対策だけでなく、AI分野における監視機能の強化も注目されるポイントだ。
生成AIや機械学習アルゴリズムは、ユーザー行動や市場構造そのものに影響を及ぼす力を持つようになってきた。
利用実態の把握、倫理的課題の抽出、公正なアルゴリズム設計の促進といった対応は、競争政策の枠を超えた重要性を帯びている。
今後は、巨大テック企業対策が行われ、日本の開発者や中小企業にとって、フェアな競争環境を取り戻すことが期待される。
また、AI分野への監視強化や、アルゴリズムの透明性や倫理性を確保することにもつながるだろう。
一方、GAFAなどの巨大テック企業は、法務に関して極めて優秀なチームを保有しており、対抗する難易度は極めて高い。
AIをめぐる倫理性の問題も複雑であり、実際に新部署がこれらの課題に対抗するためには、かなりの知的リソースを必要とするだろう。
専門知識と調査や立案の権限により、新部署は今後デジタル行政の中核拠点としての役割を果たすことが見込まれる。
今後は、現実の市場や技術の変化に対して、柔軟かつ的確に対応し続けられるかどうかが問われていくことになるだろう。