日本格付研究所、ソフトバンクグループの格付け見通しを「ネガティブ」に変更 非上場AI企業への傾斜が要因に

日本格付研究所(JCR)は2025年4月1日、ソフトバンクグループ(SBG)の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。この決定の背景には、SBGの保有資産に占める非上場のAI関連企業の割合が増加し、株式価値の変動リスクが高まったことがある。AI市場の成長を見込んだ投資戦略がリスク要因とみなされ、市場にも影響を与える可能性がある。
格付け見通し変更の背景と影響
JCRは、SBGの格付け見通し(※)を「ネガティブ」に変更した理由として、AI関連投資の拡大が財務の安定性に与える影響を挙げている。特に非上場AI関連企業への投資比率が上昇し、資産の流動性が低下する可能性が指摘されている。
AI市場は急速に拡大しており、SBGもこの成長分野への投資を加速させている。その一環として、同社はオープンAIに最大400億ドル(約6兆円)を追加出資する計画を発表している。このうち300億ドルはSBG自身の資金を活用し、残りの100億ドルは外部投資家からの調達を予定している。
しかし、AI技術の進化や市場の変動に伴い、投資先企業の価値が不安定になるリスクがある。特に、非上場企業は株式市場での評価が難しく、資産価値の変動が大きいことがJCRの懸念材料となった。このため、SBGの財務の安定性が揺らぐ可能性があると判断され、格付け見通しの変更に至った。
※格付け見通し:信用格付機関が企業の財務状況や事業リスクを評価し、今後の見通しを示す指標。ネガティブな見通しは、格下げの可能性があることを意味する。
今後の展望
今回のJCRの判断を受け、投資家や市場関係者の間ではSBGの今後の成長戦略に対する警戒感が広がる可能性がある。特に、AI関連投資のリスク管理が十分に行われているのかが注目されるだろう。これまでSBGは、AIやテクノロジー企業への積極的な投資によって成長を遂げてきたが、その一方で投資対象の変動リスクも高まっている。
株式市場では、JCRの発表を受けてSBGの株価に影響が及ぶ可能性がある。特に、既存の投資家はAI関連投資の収益化のタイミングや市場変動に敏感になっており、短期的な売買の活発化が予想される。
また、他の格付け機関の動向も重要だ。S&Pやムーディーズといった国際的な格付け機関も、SBGのAI関連投資に対して慎重な見方を示しており、財務の健全性が問われる状況となっている。これらの格付け機関が今後同様の見通しを示せば、市場への影響はさらに大きくなる可能性がある。
SBGは、引き続きAI分野への投資を推進すると見られるが、資産の流動性確保やリスク管理の強化が求められる。今後の市場の反応や他の格付け機関の判断が、SBGの投資戦略にどのような影響を及ぼすのかが注視される。