アークエッジ・スペース、MUFGと清水建設と連携 衛星データ活用でリモートセンシング事業を加速

2025年3月31日、国内の宇宙スタートアップであるアークエッジ・スペースは、三菱UFJ銀行(MUFG)および清水建設とリモートセンシング事業での協業体制構築に向けた覚書を締結したと発表した。
衛星データを活用した新規事業の創出と、アプリケーション開発を進める動きだ。
衛星データが生み出す次世代ビジネス
今回の覚書は、アークエッジ・スペースが主導する地球観測・通信衛星の技術と、MUFGの金融ネットワーク、清水建設のインフラ事業の知見を掛け合わせ、リモートセンシング分野における包括的なソリューションを開発することを目的としている。
アークエッジ・スペースは、ハイパースペクトルカメラを搭載した地球観測衛星や、船舶向けのVDES(※)通信衛星を開発しており、それらを複数組み合わせた「衛星コンステレーション(小型衛星群)」の構築を進行中だ。
衛星群から得られる高解像度データを活用することで、CO2排出量などの環境負荷の正確な可視化ができる。
中核となるのは、アークエッジ・スペースが開発する地理空間情報プラットフォームだ。
このシステムは、衛星・IoT・各種地理空間データを自動的に収集・統合・解析し、ユーザーが直感的に情報を取得できるインターフェースを備える。
AIやウェブ技術を活用することで、専門知識を持たないユーザーでも、自然環境の変化やリスクに関する高度な情報を取り扱うことが可能になるという。
これまでに行われた実証では、アンモニア燃料に切り替えた船舶のCO2削減効果を地上設置カメラでモニタリングし、客観的な排出量の把握に成功している。
これにより、海運業界のEU-ETS(排出量取引制度)対応における事務負担の軽減と透明性の確保が進む見込みだ。
※VDES(VHF Data Exchange System):
船舶間や海上交通センターとの間で、高速かつ高信頼な通信を可能にする新世代の海上通信方式。位置情報や気象情報などをリアルタイムでやり取りすることで、安全運航や業務効率化に貢献する。
衛星データの普及による社会課題解決
今回の協業においては、MUFGは金融の側面から、環境投資や気候関連財務開示(TCFD)対応に衛星データを応用する動きを強めている。
清水建設においても、施工現場の環境モニタリングや持続可能な都市開発における活用が見込まれる。
産業界全体が可視化された自然資本をどう活用するかが、今後の競争力を左右する要素になる可能性は高い。
アークエッジ・スペースのような民間企業が高度な技術と運用ノウハウを持ち寄り、多様な業界プレイヤーと連携することで、宇宙産業はより身近で実用的なものへと変容しつつある。
ただ、現時点では実証段階にあるため、事業化が軌道に乗るまでには時間と資金がかかると見られる。
協業の枠組みが具体的な事業化フェーズに進むかどうかは、今後の実証成果と社会実装のスピードにかかっているが、今回の覚書がその転換点となる可能性は大いにあるだろう。
今回の協業が、宇宙技術の「社会インフラ化」に向けた動きのきっかけとなることが期待されている。