ホンダ、独自AI活用の自動運転実証実験を開始 地方都市の交通課題解決へ

ホンダの研究開発子会社の本田技術研究所は2025年3月31日、神奈川県および神奈川県小田原市と「交通課題解決に向けた自動運転技術の実証実験に関する協定」を締結したと発表した。ホンダ独自のAI技術を搭載した自動運転システムの実証実験を行うとしている。
高齢化が進む地方都市、小田原を舞台にホンダのAIが交通問題に挑む理由
日本の地方都市が抱える交通課題は年々深刻さを増している。
人口減少と高齢化の影響で、地域の公共交通は減便や路線廃止が相次ぎ、特に坂道や傾斜地の多い地域では、移動手段を失った高齢者が日常生活に支障をきたすケースも多い。
こうした現状に対応すべく、本田技術研究所は神奈川県および小田原市と協定を締結し、自動運転技術の実証実験に踏み切る。
今回の取り組みで注目すべきは、ホンダが独自に開発した協調型人工知能「Honda CI(Cooperative Intelligence)」を活用している点にある。
Honda CIは車両と周囲の環境、さらには人や他の車両との情報共有を可能にし、道路インフラに依存せずに自律的な運転判断を行うのが特徴だ。
高精度な地図データや大規模なインフラ整備を必要としないため、急峻な地形や交通条件の異なる地域でも柔軟に対応できるという利点がある。
実証実験では、小田原市内の傾斜地を走行ルートとし、Honda CIを搭載した車両が「地図レス協調運転技術」によって、坂道や複雑な地形でどのように対応できるかを検証する。
導入されるのは「レトロフィット型アプローチ」と呼ばれる方法で、既存の町に先端技術を後付けで組み込む形式だ。
これにより、都市計画や交通インフラの大規模な見直しを行わずとも、即時的かつ現実的な改善が期待されている。
技術革新がもたらす可能性と課題、ホンダのビジョンと今後の展望
本実証実験は、小田原市を含む神奈川県西部地域で進められている「県西地域自動運転バス導入研究会」との連携のもと実施される。
目的は単なる技術検証にとどまらず、地域住民の移動手段として本当に機能するかという視点からも評価される点にある。
ホンダは2020年代後半の実用化を見据え、今後さらに研究開発を高めていく構えだ。
技術的な柔軟性の高さから、Honda CIによる自動運転は、交通インフラが十分に整っていない地域や、予算に限りがある自治体にとっても導入しやすい。
加えて、ドライバー不足が慢性化するなか、AI運転による交通サービスの維持は大きな魅力である。
しかし一方で、住民の受容性や緊急時対応の制度整備など、実用化には越えるべきハードルも多い。
ホンダは、ただの自動車メーカーとしてではなく、「移動と暮らしの進化」を掲げるテクノロジー企業として、地域の課題解決とグローバルな社会課題への貢献を目指している。
今後、国内外の他地域でも同様の技術が展開されていくことで、AIと自動運転による社会変革の実現がより現実味を帯びてくるだろう。